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働き盛りの40歳代から増える「くも膜下出血」①

2018年 6月12日 11:20

ハンマーで殴られるほどの痛み

日本人の死因第3位である「脳卒中」は脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の3つを総称して呼びます。内訳としては、脳の血管が詰まる脳梗塞が約75%と最も多く、脳の血管が破れて出血する脳出血が約12%、くも膜下出血が約3%と続きます(厚生労働省2014年「患者調査」)。女性の発症率が高いとされますが、はっきりした理由はわかっていません。
くも膜下出血は、何らかの原因により脳の表面を覆っているくも膜と脳の間のスペースに出血することをいいますが(図1)、多くは「脳動脈瘤」の破裂が原因です(図2)。
それ以外に、転倒などの頭部外傷が原因となることがあります。
     

脳動脈瘤は、脳の動脈の血管と血管の股の部分にできやすく、風船状にふくらんでいます。これが破裂するときの激しい痛みはよく、「これまで経験したことがないほどの痛み」「ハンマーで殴られた感じ」などと表現されます。
破裂した際に脳が受けたダメージ(出血量)によって、死亡や後遺症の有無が決まり、ダメージが大きい方は、残念ながら「手の施しようがない」場合もあります。

痛みのないくも膜下出血も

一方、それほど痛みを伴わないくも膜下出血もあります。
製鉄記念八幡病院脳神経外科部長、脳卒中・神経センター副センター長の佐山徹郎医師は「救急車で搬送されたときには、すでに意識障害を起こし、昏睡状態の方もおられますが、歩いて病院に来られるほど症状が軽い方もいます」と話します。
 「さらに、“マイナーリーク(微少出血)”といって、軽い頭痛、嘔気という風邪によく似た症状を呈する場合もあります。鎮痛剤でしばらく様子を見ているうちに、吐き気がどんどんひどくなり、精密検査をすると、くも膜下出血を起こしていたというケースもあります。激しい症状を伴わない場合は、なかなか診断が難しい病気です」。

再破裂をいかに食い止めるかが勝負

検査は、まずCT(コンピュータ断層撮影)で出血を診断し、診断されれば、3D-CTA(三次元脳血管造影)を行い、脳血管を立体的に描き出し、血管や瘤の状態を確認します。CTで出血が明らかでない場合もあり、そのときには腰に針を刺して髄液を採取する腰椎穿刺、MRIを追加して精査する場合もあります。
患者さんの来院時に、すでに血の固まりが脳を圧迫していて緊急手術を要するなどの場合をのぞき、くも膜下出血は「再破裂を防ぐ」手術になります。一度、破裂した動脈瘤は短期間で再破裂を起こしやすく、できるだけ早い手術が望まれます。

※次回は「くも膜下出血は予防できるか」についてです
<製鉄記念八幡病院脳神経外科部長、脳卒中・神経センター副センター長 佐山徹郎医師に聞きました>

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