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高齢者に多い4つの骨折と予防・ケアについて

2018年 9月18日 16:12

高齢者の骨折は寝たきりの原因にも

高齢者の骨折は、骨粗しょう症による骨の脆弱(ぜいじゃく)化が基礎にあり、わずかな外力でも骨折を起こすことが特徴です。いちど骨折を起こすと長期間の安静が必要で、「寝たきり」の原因になる可能性もあります。また、高齢者が骨折する原因のほとんどは「転倒」です。

高齢者に多い4つの骨折とは

1. 大腿骨近位部(だいたいこつきんいぶ)骨折
太ももの付け根の骨折で、転倒によって起こります。寝たきりになってしまう方も多く、社会問題となっています。

2. 脊椎圧迫(せきついあっぱく)骨折
背骨の骨折です。尻もちをつくことで起こることが多いです。骨粗しょう症が進むと、普段の生活動作の中でも起こることがあり、「いつのまにか骨折」と言われるものもあります。

3. 上腕骨近位部(じょうわんこつきんいぶ)骨折
腕の付け根の骨折です。転んで肩を直接打ったり、肘や手をついた時に起こります。

4. 橈骨遠位端(とうこつえんいたん)骨折
手首の骨折です。転んで手をついた時によく起こります。

    

高齢者の骨折の治療について

骨折の治療は、手術療法と手術によらない保存療法に分かれます。
保存療法の場合は、骨折部位が安定するまで数週間から数ヶ月間、骨折部の安静を保つ必要があります。脊椎圧迫骨折や橈骨遠位端骨折、上腕骨近位部骨折で骨折部が安定している場合は、保存療法が選択される場合が多いです。

しかし、大腿骨近位部骨折の場合、長期の安静により筋力低下・認知症・肺炎・(じょく)(そう)などを発症し、寝たきりになる頻度が高いことがわかっています。可能であれば手術療法を選択し、早期からリハビリを行い機能回復をはかることをお勧めします。

高齢者の骨折の予防は骨粗しょう症のケアから

高齢者の骨折は予防が何より重要です。まずは骨粗しょう症のケアに取り組むことをお勧めします。
<骨粗しょう症のケア>

・定期的に検診を受け、骨粗しょう症の程度を評価をする。

・骨粗しょう症があれば内服薬や注射薬による治療で進行を抑える。

・カルシウム、ビタミンD、タンパク質などの栄養素を適量に摂取する。

・運動、日光浴を行う。

<転倒しないために>

・ロコモティブシンドロームのチェックを行い、転倒しやすいかどうかを把握する。

・転倒しないよう、生活環境の整備を行う。

以上のことに気をつけましょう。

田山尚久副院長・整形外科部長からメッセージ

骨・関節の病気で多いのは、変形性膝関節症や腰部脊椎管狭窄症などがあります。
高齢になるにつれ増えるのが骨折です。若い頃は転倒しても骨折などしなかった方でも、高齢になると骨がもろくなり、骨折しやすくなります。
骨・関節の病気は直接、死に至るわけではありませんが、生活の質を著しく落とします。
寝たきりになると、認知症を発症する可能性も高くなります。
元気に動けるというのは、その方の「健康寿命」に大きく関係します。

わたしは「骨を鍛えるため」ではありませんが、ジムに通って汗を流しています。
とくに筋トレや有酸素運動を行っています。
適度な運動は骨粗しょう症の予防に効果的です。
皆さんも適度な運度を行って、骨折しない生活に心がけてください。


(文責:製鉄記念八幡病院 田山尚久副院長・整形外科部長)

 

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