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年代別に見る「目」の病気~スマホ老眼・リアル老眼・緑内障・白内障・加齢黄斑変性~

2020年 2月12日 09:59

生きる上で視覚はとても重要な感覚です。しかし、加齢に伴う目の疾患は高齢化とともに、増加の一途をたどっています。
パソコンやスマートフォンなどICTの進化は、生活を便利にする一方で、若年者や壮年者の目の健康にも影響するといった側面も発生しています。目の健康について、見つめ直してみませんか。

若年世代でも老眼? 増える「スマホ老眼」   

小・中学生は6~7割、高校生は9割が持っているもの、何だかお分かりでしょうか? スマートフォンです。いまや私たちの生活に欠かせないアイテムの一つですが、一方で「スマホ中毒」「歩きスマホ」といった負の現象も生まれています。「スマホ老眼」もその一つでしょうか。
10~20歳代の若い世代に増加しているスマホ老眼は、「スマホから目を離して遠くを見ると、物が見えにくい」「目が疲れやすい」といった、老眼の方が訴えるような症状をいいます。長時間、スマホを至近距離で見続けると、目の毛様体筋が凝り固まり、ピント調節がうまくできなくなります。これが原因です。

スマホを見るときは40センチ以上あけて

ピント調節機能の不全が長く続くと、近視化する傾向があるため、要注意です。スマホと目との距離を40センチ以上あける、画面を見続けたら定期的に目を休める、目薬を活用するなどの対策を行いましょう。スマホやゲームに熱中しているお子さんへの注意も忘れずに行いましょう。

30~40歳代からの老眼は「大人の証」です

今度はリアル老眼の話です。早い方では30歳代後半から症状が現れます。老眼のメカニズムは図をご覧ください。

老眼はだれにでも起こり、避けて通れませんが、なかなか認めたくない気持ちもありますね。しかし我慢して、老眼鏡を使わずにいると目や頭が重い、頭痛や肩こりといった体の不調が出る場合があります。
調節力のある若いときは焦点を合わせるための筋肉がしっかり働いてくれますが、40歳過ぎになると、だれしも筋力が衰えてきます。その結果、近くのモノが見えにくい、ピントを合わせるのに時間がかかるなど、いわゆる“近くが見えない”という状況になるのです。症状に気付いたら、先延ばしにせず、眼科受診をしましょう。老眼は病気ではなく「大人の証」なのです。

50~60歳代は「緑内障・白内障・糖尿病網膜症」に注意

老眼が増える40歳代後半は、緑内障や白内障など、「眼の生活習慣病」といわれる病気が増えます。なかでも失明の第1位である緑内障は、20人に1人の確率で発症し、放置すると視野がどんどん狭くなる病気です。
初期は自覚症状がなく、知らないうちに進行しています。一度、破壊された視神経を元に戻す治療はなく、進行を止めること(眼圧を下げること)が治療の目的となります。早期発見には定期的な眼科検診が不可欠です。

・白内障
白内障になると物がかすんで見えたり、ぼやけて見えます。眼球には角膜と水晶体という2つのレンズがあり、白内障は水晶体が白く濁るために起こります。これも老化が原因の一つとされています。老眼は近くの物が見えにくいのに対し、白内障は全体が見えにくくなる点が異なります。
失明の不安は少ないですが、「見え方がおかしい」と感じたら早めに眼科医の診断を受けましょう。進行を遅らせる点眼薬もありますが、基本的には手術での治療になります。

・糖尿病網膜症
今や国民病ともいわれる糖尿病。日本の糖尿病患者数は約1,000万人、予備軍は1,000万人にのぼります。糖尿病がとくに怖いのは三大合併症で、その一つが失明の危険性がある糖尿病網膜症があります。
失明原因の第2位であり、高血糖が続くと、網膜の毛細血管が詰まったり、酸素や栄養素が不足し、容易に出血を起こします。かなり進行するまで、自覚症状はほとんどありません。

年を重ねるごとに増加。モノがゆがんで見えたり、中心部分が見えなくなる「加齢黄斑変性」

加齢が原因とされ、網膜の中心にある「黄斑」という部分に障害が生じ、写真のような見え方になる病気です。物を見る一番大切な黄斑に異常がでる厄介な病気で、名前の通り“加齢”が一番の原因です。数十年前は稀な病気でしたが、高齢化や食事の欧米化、体質(遺伝的要素)などが原因で、失明原因の第4位まで増えています。

医学の進歩もあり、積極的な治療(目の中に注射する)も標準治療となっていますが、日常の食生活などで加齢黄斑変性になりにくい環境を作れる可能性もあるため、緑黄色野菜や魚中心の食事など日ごろからアンチエイジングに努めましょう。

今回、年齢別にみた目の病気についてご案内しました。目から入る情報はとても大切です。気になることがあれば、いつでもご相談ください。恋人や家族、孫の姿をできるだけ心に刻むために、自分自身の“見え方”について振り返りましょう!
(製鉄記念八幡病院 荒川聡 眼科部長に聞きました)

 

 

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