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「血糖値スパイク」健康診断では見落としがちな血糖値の異常

2017年 4月24日 15:34

最近、メディア報道も多い「血糖値スパイク」とは 

健康な方は空腹時血糖値が70~110mg/dlくらいで、140mg/dlを超えると「高血糖」と判断されます。高血糖が続いている状態が「糖尿病」で、現在、糖尿病患者さんは日本で300万人以上、将来、発症する可能性の高い「糖尿病予備群」を含めると2,000万人を超えるとも言われています。「血糖値スパイク」は、食後の短時間の間だけ、とがった釘(スパイク)のように血糖値が急上昇する状態をいい、ある研究では約1,400万人に起きている可能性があると報告されています。
放っておくと、将来、糖尿病になる可能性が極めて高いとされています。
(イメージ)

なぜ今、話題に?

実は、心筋梗塞や脳梗塞で病院に運ばれた方に、血糖値スパイクを起こしている方が多いことがわかってきたのです。
血糖値の乱高下が繰り返し起こっている方は、血管のあちこちで動脈硬化が進行し、それが心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすリスクを高めています。血糖値が急激に変動すると、活性酸素が大量に発生し、血管内の細胞が傷つけられていきます。この傷を修復しようと免疫細胞が集まり、その結果、血管の内側が狭くなり、動脈硬化が起こるというメカニズムです。
製鉄記念八幡病院の野原(のはら)栄(さかえ)糖尿病内科部長は「運動不足や肥満が引き金となり、筋肉の質が低下したり、内臓に脂肪がたまり膵臓の働きが低下して、うまく血糖値のバランスがとれなくなっていることが原因の一つでしょう」と話します。

やせていても血糖値スパイクの可能性あり

厄介なことに、血糖値スパイクは食後、数時間が経過すると正常値に戻るため、通常の健康診断ではなかなか発見が難しく、これといった自覚症状もありません。自分が血糖値スパイクを起こしていることに気付かないまま、動脈硬化が進行し、突然、心筋梗塞を発症するリスクもあります。

血糖値スパイクになりやすい方の特徴

「いわゆる“かくれメタボ”といわれる、太っていなくても高血圧や高血糖、脂質異常を指摘されている方に起こりやすいとされています。また、ご家族に糖尿病の方がいらっしゃる場合は、注意が必要です」(野原部長)。
「血糖値スパイクは糖尿病の予備軍です。この予備軍の方が治療や生活習慣の改善を行わない場合、およそ3年以内に1/3の方が糖尿病になる可能性が指摘されています。一度、ご自分の血糖値、とくに食後の血糖値を測定されることが早期発見につながります」(野原部長)。

どうやって測定するの? 食後の血糖値

一般的な健康診断で、糖尿病かどうかを判断する項目は「空腹時血糖値」と「HbA1c(ヘモグロビンA1c)」です。空腹時血糖値126 mg/dl以上、HbA1c6.1%以上で、糖尿病の疑いがあるとされ、HbA1cが5.8%程度で血糖値スパイクが起きている可能性が高いといわれています。
最終的に糖尿病を確定するのは、人間ドックなどの項目にある「ブドウ糖負荷試験」で、血糖値スパイクの発生もこの試験で分かります。
また、自分で測定できる検査として、尿糖検査があります。血糖値は170mg/dlを超えると尿糖が出るため、尿糖試験紙やデジタル尿糖計で測定可能です。これらの検査キットは市販されていますので、簡易的に測定できます。
さらに最近、「Free StyleリブレProシステム」という最新式血糖測定器が登場しました。
   <Free StyleリブレProシステム>
「糖尿病患者さんは指先に針を刺し、1日に複数回採血をして血糖測定をする必要があり、痛みや手間を嫌がる方もいます。この測定器は極細の針が付いた小さなセンサーを上腕に装着するだけで、痛みもなく入浴も可能です。14日分の血糖値が測定でき、15分ごとの変動を視覚で確認できますので、食後血糖値も確認できます」(野原部長)。

予防のポイントは 

血糖値スパイクを解消したり、予防するポイントは、糖質が体に吸収されるスピードを遅くすることです。そのためには、次の点に気をつけて生活習慣を改善することが重要です。

  • 「ベジファースト」 食事はまず野菜から

食物線維には血糖値の上昇をゆるやかにして、急激な変動を抑える効果があるとされています。
食事はまず食物繊維を多く含む野菜を、時間をかけて食べましょう。「野菜→肉・魚→ご飯・パン」の順番を心がけてください。ご飯は血糖上昇値が高い食品にあげられていますので、少量にしたり玄米への変更も効果的とされています。

  • 食後の運動が効果的

運動は食後に行うのが効果的とされ、手軽にできる散歩がおすすめです。歩くなどの有酸素運動と、筋肉量を増やすスクワットなどの筋肉トレーニングが有効です。血糖値スパイクは早期発見、早期対応が必要です。一度、お近くの医療機関を受診されることをおすすめします。

 

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