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夏場の塩分補給。本当に必要ですか?

2017年 7月14日 11:29

今年の夏も暑そうですね。
この時期、「熱中症に注意して水分と塩分の補給を心がけましょう」というニュースが流れます。確かに脱水は、脳卒中や心臓病、腎臓病などの引き金になるので、水分補給による適切な体液量の維持は大切です。しかし、いまだ食塩摂取量が多い私たちにとって、塩分を意識して補給する必要があるのでしょうか?

いわゆるスポーツドリンクには

500mL当たり0.5g程度の食塩が含まれていますし、100kcal程度のエネルギーもあります。
もちろん、運動後や大量の汗をかいた時などは体液量の速やかな回復とエネルギー補給のため、
電解質(塩分)や糖分を含む飲料が望ましいと言えます。
また、日頃から減塩を心がけている高齢者で食事が十分摂れなくなった場合など、適切な塩分補給が必要なこともあります。しかし、普通の生活を送っている人にとって「熱中症予防のため」意識して塩分を摂る必要はないと考えられます。

平成27年の日本人の平均食塩摂取量は

男性11g、女性9.2gです。たとば、味噌汁1杯あるいは梅干し1個を食べたとするとそれだけで食塩を1.5~2g摂ったことになります。これはスポーツドリンク1.5L 分に相当します。つまり、普通の食事を摂っている人は、特別に塩分を補給しなくても必要量は十分摂っているというわけです。このような場合、水分補給を心がければ体液量は十分維持されると言えます。

高血圧の方が

夏場に血圧が下がることは良く経験されます。気温上昇による血管拡張、発汗による体液量の減少とともに夏の食事が比較的塩分が少ないことも関与していると考えられています。
この時期にあえて塩分摂取を心がけることは、せっかく安定している血圧を上昇させる方向に向かわせることになりかねません。
食塩の過剰摂取は、高血圧のみならず、胃がんや骨粗しょう症の要因ともなります。日頃、摂取している塩分量を意識し、夏場であっても適切な減塩を心がけることが健康維持の秘訣と言えます。

 製鉄記念八幡病院病院長 土橋卓也(日本高血圧学会減塩委員会委員長)

 

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