がん

がん診療センター

日本では1981年より、「がん」が死亡原因の第1位となっており、2014年の全国でのがんによる死亡者は約37万人でした。今では国民のおよそ2人に1人が、がんに罹患し、3人に1人が、がんで亡くなるといわれています。このような状況の中、国は2006年6月に「がん対策基本法」を成立させ、翌2007年4月から施行しました。その基本理念は、どこでもがんの標準的な専門医療を受けられる「がん医療の均てん化の促進」であり、放射線療法および化学療法の推進、がん治療の初期段階からの緩和ケアの実施、医療従事者の育成などが重点施策とされました。当院ではこのような状況を鑑みて、がん診療体制をさらに強化するために、2008年1月に「がん診療センター」を開設し、今年で8年目を迎えました。
がん診療センターは、がん診療に携わる各診療科の医師のみならず看護師、薬剤師、診療放射線技師、理学療法士、臨床心理士、医療ソーシャルワーカーなどの専門スタッフが密に連携することで、より集学的かつ効率的に、がん診療を行うことを目的としています。外科手術や外来化学療法のみならず、放射線治療、緩和ケア医療、がん診療カンファレンス、がん相談支援、セカンドオピニオンなど、より専門的ながん診療を安全かつ安心して受けていただけるよう、がん診療体制を築いています。

手術

年間約400例のがんの手術を行っています。おもな内訳は、乳がん80例、肺がん80例、胃がん50例、大腸がん100例、肝臓がん40例、胆膵がん20例などであり、その他婦人科、泌尿器科のがん、脳腫瘍などの手術も行っています。がんに対する腹腔鏡や胸腔鏡下手術も積極的に行っており、その数も年々増加しています。また、消化管の早期がんに対しては、内視鏡下の粘膜切除術を年間約60例行っています。

化学療法

近年、抗がん剤のみならず分子標的治療薬などの最新のがん治療薬が次々と開発され、がんに対する化学療法は飛躍的にその治療効果が改善しています。当院では最新の化学療法を、外来にて安全かつ安心して受けていただくため、専門の治療機関である外来化学療法室を設置しています。外来化学療法室には17床の専用ベッドと専門のスタッフがおり、月に延べ200人ほどの外来化学療法を安全に行うことができます。

放射線治療

放射線治療は、手術や抗がん剤と共にがんに対する重要な治療の一つですが、当院では年間約200人の方に放射線治療を行っています。最近では通常の外照射に加え、肺がん・肝細胞がんに対する定位放射線治療も行っています。

緩和ケア医療

当院には16床の緩和ケア病棟があり、医師のみならず看護師、薬剤師、臨床心理士、理学療法士、ソーシャルワーカーを含めたスタッフがチーム医療を行っています。がん診療では治療の初期段階から緩和ケアの介入が推奨されており、当院でも緩和ケアチームが、早期から症状のコントロールや緩和ケア病棟への橋渡しを行っています。また、当院の緩和ケア病棟では、一旦入院された方でも症状が安定すれば在宅復帰ができることを目指しています。

がん診療カンファレンス、がん相談支援、セカンドオピニオンなど

毎週開かれるがん診療カンファレンスでは集学的な最良のがん医療が検討されており、また、医療の質と安全を担保するための院内がん登録も行っています。がん相談支援センターでは、がんに関する相談やがん情報の提供、退院後の施設紹介などの業務を通じて、がん患者さんへ支援を行っています。また、患者さんの要望に応じて、主治医の診断や治療方針に対する別の医師の意見であるセカンドオピニオン(有料)を受け付けています。当院から他院へのセカンド・オピニオン用の診療情報提供も行っております。
当院は、今後も地域住民の方を中心とした安心かつ安全ながん医療を提供できるよう、「がん診療センター」をさらに充実させていきます。

各種がんの診断と治療はこちら

胃がん

はじめ

胃がんは胃の内側を覆う粘膜から発生する病気です。胃がんができる原因はまだ解明されていませんが、酸性の消化液である胃液や食べ物の中に含まれる発がん性物質による刺激や、胃にすみついたピロリ菌といわれる細菌が胃がんの発生に関与しているのではないかと考えられています。
胃がんは日本人に多い病気で、年間に約5万人の方が胃がんで亡くなっており、死亡数は肺がんに続いて2番目に多いがんです。しかし、日本では胃がんの診断や治療が進歩して死亡数も減少してきています。診断レベルが向上して、早期のがんが多く発見されるようになったことや、安全でしかも十分な手術ができるようになった成果でもありますが、最近では早期がんの患者さんにとって負担や障害の少ない手術法も工夫されています。胃がんの治療を受けても多くの方は立派に社会復帰できています。

症状

上腹部の痛みや違和感、胸焼け、黒色便などを契機に発見されることもありますが、進行をしていても症状が全くないことも珍しくありません。胃がんに特異的な症状はありません。早期発見には症状がなくても定期的な検診を受けることが大切です。また、症状が長く続くような場合は、悩まず早めに受診しましょう。

検査と診断

胃がんは胃の内側の粘膜から生じるため、内視鏡検査(一般には胃カメラとも呼ばれる検査です)により胃の内側にある粘膜を検査することで、比較的早期に発見することも可能です。最近は細径の内視鏡や経鼻内視鏡も開発され、検査を受けることもかなり楽になりました。内視鏡検査では、がんが疑われる場所の組織を採取して、がん細胞の有無を調べる病理検査も行えます。また、胃がんの広がりを調べるために造影剤(バリウム)を用いた胃の透視検査、胸部X線、CT、腹部超音波、注腸検査などが行われます。また、播種と呼ばれる転移をより正確に診断するため審査腹腔鏡検査も行われるようになりました。

治療

胃がんの治療は浸潤の程度やリンパ節転移、遠隔転移の有無など、その進行程度にもとづいて決まります。日本では日本胃癌学会により定められた「胃癌治療ガイドライン」には胃がんの進行程度にあわせた治療法の選択が詳しく述べられています。

1.手術

胃がんは、手術によって病巣を切除することが最も有効な治療です。手術には従来から行われてきた開腹手術に加えて、最近では内視鏡による治療や腹腔鏡手術も盛んに行われるようになりました。

  1. 内視鏡治療
    胃がんの細胞が顕微鏡検査により比較的おとなしいタイプと判定され、病変が粘膜内にとどまり、大きさや形なども考慮してリンパ節へ転移している可能性が極めて低いと判断された場合は、内視鏡を用いて胃の内腔からがんを含めた胃壁の一部を切除します。胃の粘膜には知覚神経はありませんので、通常は痛みを感じることはありません。治療後は経過観察のため入院が必要となります。切除された組織は顕微鏡で検査され、がんの取り残しがないか、また転移や再発の危険性が高くないかを確認します。治療が不完全と考えられた場合には、外科治療の追加が必要となります。
  2. 外科治療(開腹手術)
    従来から最も有効で標準的な治療とされてきました。がん部を含めて胃の3分の2以上を切除すると同時に、決められた範囲の胃周囲のリンパ節を摘出(リンパ節郭清)します。 胃やリンパ節の切除範囲は、がんがある場所や病期により決定されます。 そして食事が摂れるように胃が切除された範囲に応じて残された胃や食道と十二指腸や空腸を吻合(再建)します。
  3. 外科治療(腹腔鏡手術)
    切除範囲や再建方法は開腹手術と同じですが、腹部に小さな穴を数カ所開けて、腹腔鏡というビデオスコープと専用の細長い器具を用いて行われる手術です。手術後の痛みが軽く手術からの回復が早いという利点があります。腹腔鏡手術は内視鏡による治療が出来ない比較的早期のがんに対して行われることが多く、進行した胃がんに対しては開腹手術がおもに選択されています。腹腔鏡手術が可能か担当医によく相談してください。

胃が切除されると消化や吸収の機能が低下します。特に1回に食事を摂取できる量が減ってしまい、術前に比べて約1割の体重減少することも珍しくありません。ただし食事方法やできるだけ栄養価の高い食べ物を摂るなどの工夫で、仕事や運動などの日常生活については、手術前とほぼ同じように過ごすことができます。

2. 抗がん剤治療(化学療法)

胃がんの抗がん剤治療には、手術と組み合わせて行う補助化学療法と病巣を全て切除できない場合に抗がん剤を中心として行う治療の二つがあります。 抗がん剤による治療だけで胃がんを完治させることは難しいのが現状ですが、胃がん手術に抗がん剤治療を組み合わせて行う補助化学療法により胃がんの手術後の再発の可能性を低くできることが証明されています。 手術と組み合わせた治療では、決められた期間(6ヶ月から1年程度)抗がん剤を使用すれば治療は終了します。 一方、胃がんを手術により切除ができない場合の抗がん剤を中心とした治療では、あらかじめ治療期間を決めるのではなく治療効果と副作用、そして体力などをよく診ながら治療を続けます。いずれの場合においても、日常生活が可能な程度の体力を維持しながら治療することが原則です。

治療後の経過観察

治療が終わった後も、体調の確認や再発がないかを確認するため定期的な通院や検査が必要です。簡単な検査は近くのかかりつけの先生のもとでも可能です。たとえ手術や抗がん剤治療によりがんの病巣が見えなくなっても、他の臓器に転移や浸潤してわずかに残ったがん細胞が再び発育して姿を現す(再発)ことがあります。一般には治療後5年間は定期的な検査が必要とされています。

大腸がん

はじめに

食物は、胃や十二指腸、小腸で消化され、その栄養素が吸収されます。そして消化・吸収が終了し液状になった残渣は最後に大腸に入り、水分やミネラルが吸収され半固形から固形の便になります。大腸がんはこの大腸の内側を覆う粘膜から発生します。大腸がんの中には遺伝との関連が明らかにされているものもありますが、多くの大腸がんでは原因はまだ分かっていません。しかし、食べ物の中に含まれる発がん性物質や肥満、飲酒などが大腸がんの発生に関与しているのではないかと考えられています
日本人が大腸がんにかかる割合は1990年代まで増加していましたが、2000年以降は横ばいとなっています。しかし、2007年のデータでは新たにがんと診断された患者さんの中で、大腸がんは男性、女性とも2番目に多いがんとなっています。一方、診断や治療が進歩して大腸がんは今では治りやすいがんの一つともいわれています。診断レベルが向上して、早期のがんが多く発見されるようになったことや、安全でしかも十分な手術ができるようになった成果でもありますが、最近では早期がんの患者さんにとって身体にやさしい治療法も工夫されています。

症状

大腸がんに特異的な症状はありません。腹痛や腹部のしこり、便秘や血便、便柱が細くなるなどの症状を契機に発見されることもありますが、進行をしていても症状が全くないことも珍しくありません。ですから症状がなくても、年に1度は定期的な検診を受けることが大切です。また、急に便通がおかしくなった、便に血液が混じる等の症状が続くときには早めに受診するようにしましょう。

検査と診断

大腸がんは簡単な便の検査で発見することも可能です。肉眼では正常に見える便でも検査で少量の血液(潜血)が認められれば内視鏡検査が行われます。また、便秘や下痢、血便、便柱が細くなるなどの症状がある場合にも内視鏡検査が勧められます。内視鏡検査で異常があれば、がんが疑われる場所の組織を採取してがん細胞の有無を顕微鏡で調べます(病理検査)。大腸がんと診断された場合には、がんの広がりを調べるために大腸のバリウム検査、胸部X線、CT、腹部超音波検査などが行われます。

治療

大腸がんの治療はステージにもとづいて決まります。日本では大腸癌研究会により定められた「大腸癌治療ガイドライン」に、ステージにあわせた治療法の選択がくわしく述べられています。

1.手術

大腸がんは手術で病巣を切除することが最も有効な治療です。手術には従来から行われてきた開腹手術に加えて、腹腔鏡手術や内視鏡治療も最近では盛んに行われるようになりました。

  1. 内視鏡治療
    大腸がんの細胞が顕微鏡検査により比較的おとなしいタイプと判定され、病変が粘膜内にとどまり、大きさや形なども考慮してリンパ節へ転移している可能性が極めて低いと判断された場合には、内視鏡を用いて大腸の内腔からがんを含めた大腸壁の一部を切除します。大腸の粘膜には知覚神経はありませんので、通常は痛みを感じることはありません。治療後は経過観察のため入院が必要となります。切除された組織は顕微鏡で検査され、がんの取り残しがないか、また転移や再発の危険性が高くないかを確認します。治療が不完全と考えられた場合には外科治療の追加が必要となります。
  2. 外科治療(開腹手術)
    従来から最も有効で標準的な治療とされてきました。がん部を含めて20~30cmの大腸を切除すると同時に、決められた範囲の大腸周囲のリンパ節を摘出(リンパ節郭清(かくせい))します。結腸がんや上部の直腸がんでは食事が摂れるように、残った腸管の断端を吻合(再建)します。がんが直腸の下部にあり肛門縁に近い場合には人工肛門をつくる場合もあります。
  3. 外科治療(腹腔鏡手術)
    切除範囲や再建方法は開腹手術と同じですが、腹部に小さな穴を数カ所開けて、腹腔鏡というビデオスコープと専用の細長い器具を用いて行われる手術です。手術後の痛みが軽く手術からの回復が早いという利点があります。従来、腹腔鏡手術は内視鏡による治療ができない比較的早期のがんに対しておもに行われていましたが、最近では進行した大腸がんに対してもケースによって選択されるようになりました。腹腔鏡手術が可能か担当医によく相談してください。

大腸が切除されても消化、吸収に大切な胃や十二指腸、小腸は残るため食事を消化吸収する機能は保たれています。しかし、直腸などの手術後には排便回数が増加したり、一度に排便する量が減少したりすることも珍しくありません。また直腸がんの手術後には排尿や性機能に障害が残ることもあります。しかし、仕事や運動などの日常生活については、手術前とほぼ同じように過ごすことができます。
直腸がんの手術では直腸間膜全切除を行ってがんを遺残させないことが重要ですが、側方リンパ節の郭清や術前の抗がん剤と放射線照射による併用療法を行うことで、さらに局所の再発を予防するよう努めています。またハイビジョンを備えた腹腔鏡を利用することで自律神経を温存し、また骨盤深部では肛門括約筋を残して人工肛門を回避することに努めています。

2. 抗がん剤治療(化学療法

治療後の経過観察

治療が終わった後も、体調の確認や再発がないかを確認するため定期的な通院や検査が必要です。簡単な検査は近くのかかりつけの先生のもとでも可能です。たとえ手術や抗がん剤治療によりがんの病巣が見えなくなっても、他の臓器に転移や浸潤してわずかに残ったがん細胞が再び発育して姿を現す(再発)ことがあります。一般には治療後5年間は定期的な検査が必要とされています。

肺がん
準備中です
乳がん

はじめに

日本では乳がんが年々増加し、女性のがんの第1位になっています。毎年、約6万人の人が乳がんにかかっています。特に40歳代から乳がんにかかる危険性が高くなります。一方で70歳を過ぎてもそれほど減りません。40歳を過ぎたら自覚症状がなくとも2年に1回は乳がん検診を受けることが推奨されています。自覚症状として一番多いのは、乳房のしこり、乳頭からの分泌物、乳房の痛み、などです。乳がんは自分で発見できる数少ないがんの一つであり、自己検診が大切です。月に一度は自己検診を行ってください。自己検診で乳房の変化を感じた人は、乳がん検診を待たずに、直ちに精密検査を受けてください。自己検診で異常がなかった人も、乳がん検診を定期的に受けましょう。

検査と診断

乳がん検診では乳房撮影(マンモグラフィ)と乳房の視触診を行い、医師が乳がんの疑いがあると判断した場合に医療機関に紹介されます。当院では診断のために視診・触診などの診察、乳房撮影(マンモグラフィ)、乳房超音波検査、乳房MRIなどを行います。診断確定のためには細胞診、組織診が必要となります。がんと診断された場合にはリンパ節や脳、肺、肝臓、骨などに転移がないか造影CT検査や骨シンチグラフィ検査を行います。早期の乳がんの場合には必ずしも造影CT検査や骨シンチグラフィ検査は行いません。
マンモグラフィとは乳房のX線撮影のことです。より診断しやすい写真を撮影するために薄い板で乳房を挟み、圧し広げて撮影します。そのため痛みを伴うことがあります。放射線の被曝量は自然界の放射線レベルと同じくらいの低さなので心配ありません。
乳房超音波検査(エコー検査)は超音波を乳房に当ててその反射波を利用して画像を作ります。人体に害はありません。超音波検査は乳房内にしこりがあるかどうかの診断に有効です。
乳房MRI検査は造影剤という検査用の薬を用いて行います。乳がんかそうでないかを判断するために行ったり、乳がんであると判明した場合にはがんの広がりを確認するために行います。
細胞診や組織診はがんの確定診断に必要となります。超音波検査でしこりをとらえながら細い針を刺して細胞を採取する細胞診や局所麻酔を行った上でやや太い針を刺して行う組織診があります。細胞診では断定することができない場合もありますので、細胞診を行っても最終的には組織診を受けていただくこともあります。組織診によりがんの性質に関するものがわかり、その後の治療方針の決定に不可欠です。
骨シンチグラフィ検査は全身の骨を一度に調べることができます。骨シンチグラフィ検査はわずかな骨転移でも診断することができますが、骨転移とは関係ない骨折や年齢に伴う変性(骨がすり減るような状態)でも異常として現れます。

治療

乳がんと診断され、最初に受ける治療を初期治療と呼びます。初期治療には手術、放射線治療といった局所治療と、化学療法(抗がん剤治療)、ホルモン療法、抗HER2療法などによる全身療法が含まれます。腫瘍が比較的小さい場合には乳房温存手術が可能です。乳房温存手術を選択した場合には原則として術後放射線療法が必要です。腫瘍が比較的大きく、温存手術が困難であると考えられる場合、乳房切除術を行います。腫瘍が大きいためそのままでは温存手術ができない場合でも、術前に薬物療法を行い、腫瘍が小さくなれば乳房温存手術が可能になる場合もあります。また手術の際には腋窩リンパ節の切除が伴います。腫瘍の大きさにかかわらず術前検査で明らかな腋窩リンパ節転移がない場合にはセンチネルリンパ節生検を行います。センチネルリンパ節は乳がん細胞が最初にたどり着くリンパ節のことをいいます。このリンパ節を手術中に探し出し、さらに、がん細胞があるかどうか(転移があるかどうか)を顕微鏡で調べる検査をセンチネルリンパ節生検といいます。転移があれば、腋窩リンパ節郭清を行います。転移がなければ腋窩リンパ節の郭清は省略できます。術後の薬物療法はホルモン受容体が陽性の乳がんならばホルモン療法を行います。HER2が陽性ならばトラスツマブなどの抗HER2療法を行います。ホルモン受容体とHER2がいずれも陰性の場合には化学療法(抗がん剤治療)を行います。

私たちからのメッセージ

製鉄記念八幡病院には医師、乳がん認定看護師を含む看護師、薬剤師、放射線技師、検査技師、理学療法士、作業療法士、臨床心理士など多くのメンバーで構成される乳腺チームがあります。乳がんの治療を行っていく中で、患者さんは様々な場面で選択を迫られることがあります。お一人お一人がその人にあった最良の選択ができるように乳腺チーム一丸となってサポートしていきます。

肝がん

1)肝がん(肝細胞がん)とは?

肝臓の細胞の大部分を占める肝細胞由来のがんのことです。肝臓は「沈黙の臓器」と言われるように症状が出にくい臓器ですので、肝がんができてもかなり進行しないと症状は出ません。肝がんの70-80%がB型肝炎やC型肝炎といった肝炎ウイルスの感染による長期にわたる炎症の持続が原因です。その他の原因としてアルコール性肝硬変や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などがあります。ほかのがんよりも原因がはっきりしていることが多いため、これらの病気を持っている患者さんに対して定期的な検査をすることによって早期に肝がんを診断することができます。また、B型肝炎やC型肝炎に対してウイルスを減らしたり、排除したりする治療を行うことによって肝がんの発症を抑制することができます。近年、肝炎ウイルスに対する治療は大幅に進歩しており、以前は治療困難だった方でも副作用が軽く、効果的な治療が行えるようになりました。当院においても積極的に治療を行っています。

2)肝がんの検査、治療について

肝がんの検査には血液検査と画像検査があります。血液検査ではB型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス感染の有無(HBs抗原、HCV抗体)、肝炎の有無(AST、ALT)、肝臓の働き(ビリルビン、アルブミン、プロトロンビン時間)、腫瘍マーカー(AFP、PIVKA2)などを調べます。画像検査には腹部超音波(エコー)検査と腹部CT、MRI検査があります。実際には、慢性肝炎や肝硬変の患者さんに対して3ヶ月から6ヶ月ごとに腫瘍マーカー測定と画像検査を行い、肝がんの早期診断を心がけています。
肝がんの治療には内科的治療と外科的治療があります。がんの大きさや個数、肝障害の程度、ほかの臓器への転移の有無を考慮して治療法を選択します。外科的治療とは肝がんを切除する手術のことです。内科的治療にはおもにラジオ波焼灼療法(超音波装置で観察しながら肝がんに細い針を刺して、熱で肝がんを焼く治療)と経肝動脈的化学塞栓療法(肝がんを栄養する血管に細いカテーテルを挿入し、抗がん剤や塞栓物質を注入する治療)があり、ほかに進行した肝がんに対しては分子標的薬による内服治療、持続動注化学療法を行っています。内科的治療や外科的治療が難しい場合は放射線治療も行っています。

3)肝臓病は自覚症状が出にくいですので、定期的に検査を受けることが大事です。B型肝炎、C型肝炎と診断された方、肝機能障害を指摘されたことがある方は定期的に血液検査と超音波検査を受けてください。また、一度もB型肝炎、C型肝炎の検査を受けたことがない方は血液検査で簡単に調べられますので、お近くの医療機関で肝炎検査を受けてください。

膵がん

1)膵がん

膵がんは難治性のがんで、病院を受診した時点ですでに手遅れとなっていることも少なくありません。その理由は、①体の奥(背中側)に位置しており早期の状態では発見しにくいこと、②腫瘍が小さいうちから周囲に転移や浸潤をしやすいこと、が挙げられます。
治療のためには早期発見が極めて重要ですが、‘数ミリ’の超早期膵がんを発見できる有効な検診法はまだ確立されていませんので、早期発見には膵がん発症リスクの高い方や膵がんとの関連が疑われる症状をお持ちの方の積極的な受診が必要となります。

2)発症リスク・関連症状

膵がんは、①家族歴(血縁者に膵がん)のある方や、②膵炎の既往がある方で特に発症しやすいとされ、喫煙・高齢・男性・肥満・糖尿病と関連があると言われています。
症状としては、①血糖上昇(糖尿病の発症や悪化)、②黄疸・灰白色便、③体重減少・食欲不振、④腹痛・上腹部違和感、⑤背部痛などが挙げられます。

3)検査

血液検査・腫瘍マーカー測定、腹部超音波・造影CT・MRI検査、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)・超音波内視鏡検査(EUS)などがあります。膵がんを疑って外来を受診された場合には、まず血液検査・腫瘍マーカー測定、腹部超音波・造影CT・MRI検査といった、体に負担のほとんどない検査から始めます。

4)治療

手術・化学療法・放射線療法などがあります。転移や周囲主要血管への浸潤などがなければ根治を目指して手術を行いますが、切除不能であれば化学療法(抗がん剤)や放射線療法で延命を図ります。化学療法(抗がん剤)は年々進化しており、放射線療法もより効果的な方法(重粒子線など)が開発されています。

5)当院で行う膵癌治療

手術・化学療法・放射線療法(重粒子線を除く)のいずれも当院で施行しています。緩和病棟も併設しており、残念ながら進行してしまった場合も痛みや辛さを和らげる医療を行っています。

6)メッセージ

膵がんを治すには“より早い発見”が最も重要です。少しでも気になったらご自分のために躊躇なく受診して下さい。検査段階では「痛い」ことはあまりありません。わかりやすい説明を心がけております。一緒にベストの治療方法を選択していきましょう。

脳腫瘍

1)脳腫瘍

頭の中にできるすべての腫瘍をひとまとめにして頭蓋内腫瘍、あるいは脳腫瘍といいます。頭の中の固有の組織から発生する原発性脳腫瘍と、他臓器からがん細胞が転移してきた転移性脳腫瘍に大別されます。原発性脳腫瘍は厳密には「がん」ではなく良性のものもあり、人口10万人あたり年間約10人が発症します。2007年のWHOの脳腫瘍分類によると133もの種類があり、脳を包む髄膜から発生する良性の髄膜腫、脳実質から発生する悪性のグリオーマ、神経を包むシュワン細胞から発生する神経鞘腫などが代表的です。一方、転移性脳腫瘍は、肺がん、乳がん、直腸がん、腎がんからの転移が多いです。
脳が他の臓器と違うのは、頭蓋骨に囲まれた閉鎖された空間に存在することと、脳にはほとんど全ての領域に固有の機能が存在することです。閉鎖空間であるため、腫瘍の増大や髄液循環障害による水頭症、脳浮腫の増加などによって、頭蓋骨内のボリュームが増えることにより頭蓋内の圧が上昇し(頭蓋内圧亢進といいます)、ひいては脳幹が圧迫される脳ヘルニアをきたします。頭蓋内圧亢進症状としては頭痛、悪心、嘔吐、うっ血乳頭がありますが、腫瘍が発見された時点ですでに脳ヘルニアが進行しており、時間的な余裕がなく、良性でも死に至ることがあります。腫瘍が発生した部位の近くの固有の脳機能が障害されるため、ありとあらゆると言って良いくらいさまざまな脳局所症状が出現します。また、ホルモンを自律的に産生して内分泌代謝疾患を引き起こすものもあります。

2)当院で行う脳腫瘍の治療について

脳腫瘍の治療の第一歩は、手術による最大限の摘出と正確な病理診断です。もちろん、手術によって腫瘍を最大限に摘出することが望ましいのですが、他の臓器と違って脳は全摘出ができません。悪性のグリオーマは、細胞レベルでは正常脳組織の間を縫って深く浸みこむように入り込んでいるため(浸潤といいます)、腫瘍を全て摘出するのはほとんどの場合、不可能です。神経機能を可能な限り温存したうえで、最大限の腫瘍摘出を行わなければならないのが、脳神経外科手術の困難なところです。当院では、三次元コンピュータ融合画像を用いて詳細な術前評価を行い、術中ニューロナビゲーションシステムや術中ICG蛍光脳血管撮影による手術支援、電気生理学的モニタリングによる術中脳機能評価を行い、できる限り安全で確実な脳腫瘍摘出を行っています。脳腫瘍の摘出は手術用顕微鏡を使って術野を大きく拡大しながら行いますが、腫瘍からの出血が多いと細い血管や神経を視認することができないため、温存することが格段に困難になります。当院では、術前に脳血管内治療指導医による腫瘍栄養血管塞栓術を行うことにより、術中の出血を減らして手術をより安全にする工夫も行っています。
最大限の摘出を行った後は、病理専門医による正確な診断にしたがって、術後補助療法を行います。先ほど述べたように、脳腫瘍には133もの腫瘍型/亜型があり、それぞれにとって有効な化学療法や放射線療法の組み合わせが異なります。最近では、組織学的には同じ腫瘍でも、腫瘍細胞の遺伝子異常のパターンにより有効な化学療法が違うことがわかってきました。グリオーマについては全例、九州大学脳神経外科教室とタイアップして遺伝子診断を行って、分子病理学的診断に基づく適切な放射線・化学療法を行っています。また、悪性リンパ腫と胚細胞腫瘍は例外的に化学療法/放射線療法が著効するため、手術の目的は生検による組織確認であり、最大限の摘出は一般的に行われません。

3)患者さんへ

当院では、手術前に詳細な評価を行いリスクを患者さんに十分に説明して、納得のいく治療を提供することを目標としています。また、セカンドオピニオンも積極的に受け入れていますので、お気軽にご相談ください。

膀胱がん

1)膀胱がんとは

85~90%が血尿を主訴に受診し、早期がんの場合は血尿以外に症状のない無症候性肉眼的血尿で見つかることが多いです。しかし進行し浸潤がんになれば症候性血尿(膀胱刺激症状や痛みを伴う血尿)となります。高齢になるほど罹患率が高く、男性に多い(男女比:4:1)です。

2)当院で行う膀胱がん検査、治療について

診断には侵襲のない尿細胞診でのスクリーニングを行い、疑われれば膀胱鏡検査で膀胱内の腫瘍の有無を確認します。
治療は切除術が基本です。早期であれば内視鏡による経尿道的膀胱腫瘍切除術が可能ですが、進行した浸潤がんになれば開腹術による膀胱全摘術および尿路変更術が必要になります。さらに進行し転移を認めた場合は根治手術は不可能のため抗がん剤による加療が必要になります。抗がん剤は50%程度で有効ですが、その後進行し、がんでなくなることは避けられません。
膀胱がんは進行すれば癌死します。早期にがんを診断することが大切です。

1)メッセージ

膀胱がんは進行すれば予後不良です。早期発見のため肉眼的血尿があれば泌尿器科に相談しましょう。

前立腺がん

泌尿器科医のしごと

図1:泌尿器科があつかう臓器

泌尿器科では、尿が通過する臓器と男性の生殖器を診療します(図1)。これらの臓器が正常にはたらき、スムースな尿の排泄が行えるようサポートするのが泌尿器科のしごととなります。
おもな疾患は、副腎腫瘍、腎腫瘍、尿路結石、尿路感染、膀胱や上部尿路の腫瘍、前立腺腫瘍(肥大症、がん)、神経因性膀胱、尿失禁、尿路性器の奇形、精巣腫瘍、男性不妊症です。

前立腺腫瘍

前立腺腫瘍には、良性の前立腺肥大症と悪性の前立腺がんがあります。どちらも、おもに50歳以上の壮年期以降の男性に発症する疾患です。前立腺肥大症は、おしっこがでにくいことを主訴に受診されますが、前立腺がんでは初期には自覚症状がなく、検診などで採血(PSA検査)の異常を指摘され、診断されます。前立腺がんは現在増加傾向であり、当院ではとくにその診断・治療に力を入れています。

前立腺がんの診断

図2:前立腺生検の実際

初期には症状がなく、採血(PSA検査)の異常を指摘され当科受診となります。PSA検査の結果と診察により、がんが疑われれば前立腺生検を行います。生検は肛門より超音波探子(プローベ)を挿入し、前立腺の画像を写しながら、針を刺入して前立腺組織を採取します(図2)。針刺入時の疼痛緩和のため、仙骨硬膜外麻酔を施行しますので、痛みはあまり心配いりません。前立腺生検は、まれにひどい出血、発熱をおこすことがあるため、現在は1泊2日の入院をし、検査を行っています。
生検によりがんと診断されれば、画像検査(CT、骨シンチなど)を行い、病気の広がり(病期)を確認し、病期に即した適切な治療法を、患者さまと相談しながら決めていきます。

前立腺がんの治療

治療の選択肢には、経過観察、手術、放射線治療、内分泌治療があります。
経過観察とは、無治療で経過観察し、病気が進行してから治療を開始する方法で、前立腺がんに特有の治療選択肢です。このがんは従来進行が遅いことより、診断時の年齢が高齢で、無治療でもがんで亡くならないことが予測される場合に限り、経過観察が選択されます。一般的には、これを除いた3つの治療法(手術、放射線治療、内分泌治療)を単独あるいは組みあわせて行います。
年齢が比較的若く(一般的には75歳まで)、病気が前立腺内にとどまる早期の場合は、根治療法としての手術や放射線治療を、転移などを認める進行例や高齢の方には内分泌治療(病気を抑える治療)を選択します。

おわりに

図3:日本男性の各がんの毎年の発症数
大野ゆう子ほか:日本のがん罹患の将来推計がん・統計白書
- 罹患/死亡/予後 -
篠原出版新社,東京,2004

現在、日本は高齢化社会をむかえ、今後ますます前立腺がんが増加することが予測されています(図3)。治療の選択肢が多く、高齢の方が多いため、病期の進行のみではなく、全身状態、年齢、社会環境および患者さまの希望を考慮したうえで、一人ひとりに最も適切と思われる医療の提供をめざしています。
最後に、インターネットが可能な方は以下のホームページをぜひご参照ください。前立腺がんの診断・治療について患者さま向けにわかりやすく解説しています。
ホームページhttp://zenritsusen.jp/

前立腺検診のすすめ

立腺がんは初期には症状がありません。
男性は50歳を過ぎたら、年1回は前立腺検診を受けましょう。
検診は採血(PSA検査)のみです。