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女性に多い股関節の痛み。それは「変形性股関節症」かもしれません

2017年 1月30日 15:09

「脚の付け根が痛い、しびれる、動かせる範囲が減った」など、股関節の違和感や痛みは女性に多い訴えの一つです。この悩みの多くは「変形性股関節症」という病気が原因となっています。

変形性股関節症の8割が、先天性の病気が原因 

生まれつき股関節がずれている「先天性股関節脱臼」や骨盤の発育不全である「寛骨臼形成不全症(かんこつきゅうけいせいふぜんしょう)」といった先天性の病気があります。これらの症状を長年抱えていると、体重の負荷で軟骨がすり減り、骨頭と臼蓋(きゅうがい)がこすれ、痛みや運動障害が出る変形性股関節症という病気になるケースがあります。

A子さん(66歳)は2016年8月、当院を受診し、両脚の変形性股関節症と診断されました。1歳半のときに「先天性股関節脱臼」で、両足にベルトを着けていたということです。この病気は、布おむつを使用していた年代の方に多くみられ、当時は治療の難しい病気と考えられていました。現在のように、M字の股の形にそって当てるおむつが登場して、患者は減少し、生後の定期検診で早期発見も可能となっています。
一方、「寛骨臼形成不全症」は幼少期には発見されることが少なく、高齢になって痛みや運動障害が出ることが特徴です。

がまんの限界 歩くのも困難に 

A子さんは60歳になった頃、左脚にまず痛みを感じるようになりました。もともと、我慢強い性格もあり、クリニックで処方された痛み止めや湿布でまぎらわせていました。
「4年間我慢しました。でも、痛みはどんどん増すばかり。昨年くらいから右脚も痛みはじめて。杖をついて、2分歩くのがやっと。あまりに痛そうに歩くものですから、スーパーやクリニックでもよく声をかけられました。なかには『同じ病気だから痛みがわかります。私は人工股関節を入れているのよ』と教えてくれる方もいて、案外、同じ病気の方が多いなあと思っていました」とA子さん。
家事や歩くことも不自由になり、当院の整形外科を受診。主治医の田山尚久副院長・整形外科部長から両脚とも人工股関節置換術の適応であると診断され、手術を決断しました。「とにかく治りたい、歩きたいという気持ちが強くて、手術にまったく抵抗はありませんでした」と話します。

田山尚久整形外科部長に聞く

Q.変形性股関節症は、A子さんのように先天性の病気を持った方が多いのですか?

田山部長 「変形性股関節症の約8割は、先天性股関節脱臼、寛骨臼形成不全症などを基盤として発症しています。先天性股関節脱臼の患者数は減っていますが、寛骨臼形成不全症については、はっきりわかりません」。

Q.この病気が疑われる「潜在患者」は多いのですか?

田山部長 「変形性股関節症の有病率は約4%といわれ、これは日本に約48万人の患者さんがいる計算になりますから、潜在患者さんは多いでしょうね。人工股関節置換術は全国で1年間に5万例以上行われています」。

Q.ほかの原因で変形性股関節症になることは?

田山部長 「特発性大腿骨頭壊死症、外傷性大腿骨頭壊死症、外傷性股関節脱臼後、関節リウマチなどの炎症性疾患、化膿性股関節炎などで股関節が悪くなることがあります」
製鉄記念八幡病院副院長・整形外科部長・リウマチ科部長 田山尚久

術後~回復期病棟でのリハビリ 

A子さんは8月はじめに左の股関節、2週間後に右股関節の手術を行いました。人工股関節置換術は、傷んで変形している股関節の表面を取り除き、人工関節に置き換える手術です。手術時間は変形の度合いにもよりますが、90分から120分程度です。当院では両側に手術が必要な患者さんは、2週間空けて片側ずつ行います。まずは痛みがより強い側、もしくは変形の強い側を先に手術します。

「すべての患者さんが人工股関節置換術の適用ではなく、痛みが激しく日常生活に大きな支障が出ている場合に考えます。手術のメリットは、股関節痛の軽減が確実に得られることで、ほとんどの患者さんが、術前の痛みが取れたと喜ばれます。一方、主なデメリットとしては、脱臼しやすい、感染に弱い、長期間の経過でゆるんでしまう可能性があることの3つです。これらが起こる危険性はわずかですが、手術後、一生涯つきまとうことですので、手術を受ける際にはそれなりの覚悟が必要です」と田山部長。

「もっと早く手術したかった」

当院は検査、手術、入院など、高度で専門的な医療を提供する急性期病院で、国の医療政策で入院期間が短くなっています。しかし、回復期リハビリテーション病棟とよばれる病棟に移ることで、この手術後は最大90日間の入院が可能になります。
「急性期病棟では日常生活に支障のない程度まで回復する入院治療は不可能です。しかし、回復期リハビリテーション病棟では、日常生活で注意しなければならない動作なども交えながらリハビリテーションを続けることができます」と、田山部長は話します。
退院を控えたA子さんは「一番痛かった時を10とするなら、今は少々腰が痛いくらいで、2程度です。もう、解放感でいっぱいです。今まであきらめていた遠方への旅行も、もう少し自信がついたらトライしたいです」と意欲的です。

痛みに我慢することなく日常生活を送るために、専門医に早めに相談して適切な治療を選択することをおすすめします。