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肺炎と異なる「間質性肺炎」とは?

2024年 1月10日 09:15

間質性肺炎は「免疫」が引き起こす

間質性肺炎は、ばい菌やウイルスと戦う「免疫」が引き起こす肺炎で、ばい菌やウイルスによる一般的な肺炎とは異なります。「免疫」という言葉はすっかりお馴染みになっている専門用語ですが、具体的には白血球が警察や自衛隊のように、体を守っている防御作用の総称です。
間質性肺炎はさまざまな原因から、この免疫が暴走して肺に炎症や傷害を起こし、肺自身も自己修復ができなくなって「線維化」といって硬くなり、結果として酸素のやり取りができなくなる病気です。

医療機関を受診される患者さんは10万人あたり10~20人といわれていますが、早期病変の患者さんはその10倍以上はいる可能性があり、およそ500~1000人に1人くらいの人がかかるのではと考えられます。知名度は低いですが、あまり稀な病気ではありません。

初期症状は息切れや空咳

最初の症状として、坂道や階段の歩行中、入浴など日常生活の動作の中で「息切れ」を感じるようになります。痰のない「空咳(からせき)」が続くこともあります。時間をかけて徐々に進行する病気なので、自覚症状が出る頃には病状が進んでしまっていることもあります。軽い症状でも心当たりのある方は、お医者さんに相談してみてください。 

間質性肺炎にかかると、サチュレーションモニター(酸素飽和度を測定する機器)で低い値がでたりします。特に体を動かした時に如実です。また、聴診上は(ねん)髪音(ぱつおん)といって、マジックテープを剥がす時のようなパリパリとした音が聞こえます。胸部レントゲン検査での早期発見は難しいですが、以前のレントゲンと比較することで診断率があがります。特に、心臓や肋骨、横隔膜などがぼやけて見えて発見されることがあります。そのため、かかりつけのお医者さんや健康診断などで、年に1回くらいはレントゲンを撮ってもらって、毎年の経過を比較してもらうことは有用です。

間質性肺炎の原因は?

原因として、関節リウマチや膠原病などの自己免疫性の病気、職業や生活での粉塵(ほこり)、カビ・ペットの毛・羽毛などの慢性的な吸入によるもの、薬剤・漢方薬・健康食品などによる薬剤性、特殊な感染症などが知られています。

一方、原因を特定できないものを「特発性間質性肺炎」といいます。インターネットで調べると、この「特発性」がヒットすることが多いと思いますが、実際には様々な病態の総称ですので、患者さんごとに病態が均一ではありません。

さらに、特発性間質性肺炎のなかに「特発性肺線維症」という、肺が硬くなるスピードが早いものがあり、わが国の報告では初診時から61-69ヶ月と報告されていますが、患者さんごとに異なるのが現状です。

どんな検査をするの?

専門の医療機関での診断は、既往歴・職業歴・家族歴・喫煙歴などを含む詳細な問診、肺機能検査、血液検査、レントゲン検査、CT検査などで行います。また、肺の中の免疫の状態を調べるために気管支鏡検査(カメラの検査)を行います。さらに、体への侵襲(負担)はありますが、外科的に手術で肺の一部を切除して病理検査(顕微鏡での検査)を行うと、有用な情報が得られることがあります。

まずは環境の見直しから

治療は病態によりさまざまで、現在の医学では治すことは困難です。しかしながら進行を遅らせる治療を行います。具体的には、環境からの吸入による影響がある患者さんには環境整備を行います。羽毛による影響がありそうな方には、羽毛布団やダウンジャケットなど羽毛製品の廃棄をお願いしています。また、家庭環境での黒カビの吸入による影響がありそうな患者さんには、水まわりのリフォームや、エアコンの洗浄をお勧めします。特にエアコンは、コンプレッサーで結露して、内部はかなり汚染されています。ご自身での掃除はかえってカビを吸い込んで危ないので、業者さんによる洗浄をお勧めしています。

命に関わることも

お薬での治療は、炎症のつよい患者さんにはステロイドや免疫抑制剤、線維化のつよい患者さんには抗線維化薬を使用します。間質性肺炎の中の各病態で適応が異なりますので、専門的に判断します。また、風邪症状の後、急激に呼吸困難が出現することがあり、「間質性肺炎の急性増悪」と呼ばれています。この場合には入院の上、強力なステロイド治療が必要になります。この間質性肺炎の急性増悪が起こってしまうと、命に関わり、たとえ救命できても肺の破壊が進んでしまいます。感染予防はきわめて重要で、外出時のマスク着用や手洗い、うがいなどの感染症対策が必要です。

1)日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会編:特発性間質性肺 炎診断・治療の手引き改訂第3版 南江堂 2016

2)Natsuizaka M, et al. Am J Respir Crit Care Med 2014; 190: 773-779.

製鉄記念八幡病院 呼吸器内科部長 鈴木邦裕
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