呼吸器内科

特色

急性疾患や慢性疾患の急性増悪など、呼吸器疾患全般の急性期の診療を中心に行っていますが、地域医療機関(かかりつけ医)の支援病院として、病診連携を図り実践しています。また、標準的で適切な診療を提供するように心がけています。
入院患者さんのほとんどは地域医療機関からのご紹介で、地域の医療機関と研究会や症例検討会などを開き、治療等について意見交換ができる場を頻回に持つようにしています。
院内では、全医師およびコ・メディカルスタッフが参加するカンファレンスを行い、診断・診療方針を検討しています。

扱う疾患

地域医療機関(かかりつけ医)から診療を依頼された患者さんについて、呼吸器疾患全般の診療を行っています。入院患者数の多い疾患は肺がん、肺炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、睡眠時無呼吸症候群などです。

肺がん 各科と連携して、手術療法(外科)、放射線療法(放射線科)、化学療法(当科)の中から単独あるいは組み合わせて適切な治療を行います。他施設・研究機関と共同して、新しい治療法についての検討も行っています。
肺炎 適切な治療により、早期退院をめざしています。比較的まれな種々の呼吸器感染症にも対応しています。
気管支喘息
慢性閉塞性肺疾患
(COPD)
肺気腫などの慢性呼吸器疾患は、急性増悪期の診療を中心に行っています。安定期には地域医療機関(かかりつけ医)と協力して、日常診療に取り組むようにしています。
間質性肺炎 詳細な病歴聴取、諸検査を行ったうえで、気管支鏡検査、外科生検の要否を考え診断できるようにつとめています。
そのほか多彩な肺疾患についても、症例の経験が豊富です。
睡眠時
無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群の検査(ポリソムノグラフィー)・治療についても積極的に取り組んでいます。

診療の標準化・質の向上への取り組み

肺がん化学療法、肺炎、睡眠時無呼吸症候群などにつき、クリニカルパスを用いて標準化に 取り組んでいます。

こんな症状ありませんか?

気管支ぜんそく
気管支の壁が腫れ、気管支を取り囲んでいる筋肉が収縮して気管支が狭くなる病気で、せきやたんが出やすくなり、ゼーゼー、ヒューヒューという音(ぜんめい、喘鳴)を伴って息苦しくなります。
気管支ぜんそくは、成人では3~5%が罹っています。高齢になって初めてぜんそくになる方も少なくありません。ぜんそくの炎症はダニやハウスダスト、花粉、ペットのふけなど日常のありふれた物質に対するアレルギーが関わっていることが多いのですが、成人のぜんそくではアレルギーの原因物質が特定できないこともあります。
日頃は何ともなくても、明け方に咳き込んで目が覚める、激しい運動をすると症状が出るといったこともあります。このような症状が繰り返し起これば、ぜんそくの可能性があります。発作がないとぜんそくは治ってしまったように思われるかもしれませんが、ぜんそくの原因となる気管支の炎症は続いています。炎症が続けばいずれまた発作が起こります。日頃から炎症をおさえる治療を行うことが大切です。その治療の主役がステロイドの吸入薬です。その他にぜんそくの重症度に応じて気管支拡張薬とよばれる吸入薬や内服薬を追加することもあります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。原因はタバコを主とする病気で、中高年に発症する生活習慣病といえます。40歳以上の人口の8.6%、約530万人の患者が存在すると推定されています。喫煙者の15~20%がCOPDを発症します。症状としては歩行時や階段昇降など身体を動かした時に感じる息切れ、慢性のせきやたんなどが特徴的な症状です。長期の喫煙歴があり慢性にせき、たん、労作時呼吸困難があればCOPDが疑われます。確定診断にはスパイロメトリーといわれる呼吸機能検査を行い、同様の障害をきたすその他の疾患を除外できればCOPDと診断されます。COPDは全身の炎症、骨格筋の機能障害、栄養障害、骨粗鬆症などの併存症をともなうことがあります。
COPDの治療は、症状の程度や増悪の頻度を加味した重症度を総合的に判断したうえで行います。喫煙を続けると呼吸機能の悪化が加速してしまいますので、禁煙が治療の基本となります。インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種が勧められます。治療として第一に吸入薬が推奨されています。そのほかには呼吸リハビリテーション(口すぼめ呼吸や腹式呼吸などの呼吸訓練・運動療法・栄養療法など)があります。
非結核性抗酸菌症
診断される方が増えてきた非結核性肺抗酸菌症は、結核菌以外の抗酸菌による肺の感染症です。わが国では抗酸菌の8割以上がマック菌、1割がカンザシ菌という菌であり、中高年の女性に多い傾向があります。非結核性肺抗酸菌は土や水などの環境中に存在する菌で、結核菌とは異なり人から人には感染しません。数年から10年以上かけて、ゆっくりと進行することが多いため、初期では無症状のことが多く、進行してくると呼吸器の症状(せき、たん、血痰、息切れなど)や、全身症状(発熱、体重減少)などが出現します。検査では、胸部エックス線や胸部CTで肺に異常な影(多発する粒状影、空洞影、気管支拡張など)がないか調べます。診断にはたんの中に菌が含まれていないか、菌の培養を行います。たんの出ない場合は、気管支鏡を行うことがあります。マック菌が原因と診断されて、症状や肺の影が悪化してくる場合には3剤以上の抗菌薬を、少なくとも1年半ほど飲む必要があります。治療期間は長く、薬の効きにくい方もいます。さらに菌が完全に消えることは稀であり、治療終了後も再発しないか定期的に画像検査を行う必要があります。一方、カンザシ菌は肺結核と同様の治療を行い、同等の効果が期待できます。
肺がん
肺がんは、肺そのものから発生したものを原発性肺がんといい、他の臓器から発生し、肺に転移したものを転移性肺がん、または肺転移と呼びます。早期であれば手術が最も治癒の期待できる治療法ですが、発見された時には進行している場合が多く、手術のほかに放射線治療や抗がん剤治療、さらにこれらを組み合わせた治療が選択されます。全身のがんの中では、最も治療が難しいがんの一つです。
肺がんに特徴的な症状はありませんが、肺がんの種類、発生部位、進行度によって症状は異なります。血痰が続くときは、肺がんを疑う必要があります。
肺がんであることを調べる検査として、CT、たん検査や気管支鏡を用いた細胞検査(病理学的診断)があります。胸水が貯まっている場合は、針を体内に刺して胸水を採取しがん細胞の有無を調べます。肺がんの進行度(がんの広がり)を調べる検査には、全身CT、PET検査、脳MRI、骨シンチが用いられます。以上の検査で、がんの種類(小細胞がんと非小細胞がん)と進行度を明らかにします。進行度は、転移のないものから進行がんまで4段階に分けI期、II期、III期、IV期に分類します。小細胞がんは、発見時にはすでに転移していることが多く、遠隔転移(脳や骨、肝臓、副腎、がん性胸水など:進展型と呼ばれる)がある場合は、抗がん剤治療を行い、遠隔転移がない(胸の中のリンパ節転移までに留まっている:限局型と呼ばれる)場合は、抗がん剤と胸部放射線照射の組合せが用いられます。非小細胞がんは、IA期では手術のみ、IB期から手術可能なIIIB期までは手術後に抗がん剤治療を組み合わせるのが一般的です。負担が軽い胸腔鏡(内視鏡)による手術も広く行われています。何らかの理由で手術ができない場合も、早期であれば定位放射線照射などで手術並みに治すことが可能です。手術が不可能なIIIA、IIIB期では胸部放射線照射と抗がん剤2剤を組合せた併用療法を行います。放射線照射ができないIIIB期、IV期では抗がん剤治療を行います。抗がん剤治療の効果は限られたものでしたが、近年、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬と呼ばれる新しい薬が開発され、人によっては劇的な腫瘍縮小効果と延命効果が得られています。
肺炎(肺炎球菌肺炎)
肺炎は日本人の死因第3位の病気です。発症のピークは65歳以上と15歳未満で、肺炎で亡くなる方のほとんどが65歳以上の高齢者です。なかでも、持病がないか、あっても軽微な方の肺胞内に細菌などが感染して炎症を起こす病気を(市中)肺炎と言います。原因となる細菌は何種類もありますが、最も多いのは肺炎球菌です。肺炎球菌は鼻やのどの奥に着きやすく、風邪などで免疫力が落ちた時などに菌が肺胞まで降りて肺炎球菌肺炎を発症します。

詳しい症状は?

せき、たん、息切れ、胸痛などの胸の症状、発熱、倦怠感、食欲不振、意識もうろうといった全身症状などがあります。医療者は高齢、脱水あり、呼吸困難あり、血圧低下ありの4項目中どれだけ当てはまるかで、肺炎がどれだけ重症であるかの目安の一つにしています。

病院での検査と治療について教えてください

ほぼ必ず行うのは胸のレントゲン撮影です。レントゲンでわかりにくい場合には胸のCTスキャンを行います。あとは炎症、脱水の有無や内臓の状態などを確認する血液検査、原因となる細菌を確認する喀痰(かくたん)検査や尿検査などが行われます。治療には肺炎球菌に有効な抗菌薬を用います。軽い肺炎は外来で内服抗菌薬による治療が可能ですが、重い肺炎になると入院治療が必要になります。

肺炎球菌ワクチン+インフルエンザワクチンをお勧めします

肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの併用により、肺炎発症を予防し、肺炎による入院や死亡を抑制できると統計的に証明されています。
65歳から5年ごとの肺炎球菌ワクチン定期接種(1回のみ公費助成が受けられます)と毎年1回のインフルエンザワクチン接種が推奨されます。
(参考文献・資料:日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017作成委員会, 成人肺炎診療ガイドライン2017.,日本呼吸器学会ホームページ)
咳ぜんそく
8週間以上続く咳を、慢性咳嗽(まんせいがいそう)と呼びます。その中で、(やや幅はありますが)10%〜55%は咳ぜんそくであると報告されています。咳ぜんそくも「ぜーぜー、ひゅーひゅー」と呼吸困難発作を伴う典型的な気管支喘息と同様、きっちりと治療しなければならない病気です。
咳ぜんそくは咳だけを症状とするぜんそくで、気管支喘息の一型です。典型的なぜんそくと同様に、特有の気道炎症が原因となります。また放置すると、発作性の気管支喘息に移行したり、気道リモデリングが進んでしまう可能性があり、通常のぜんそくと同様に吸入ステロイド薬などできちんと治療をしなければなりません。
これまで咳ぜんそくは診断が難しい病気でしたが近年、特有の気道炎症を反映する呼気一酸化窒素(NO)濃度を測定することにより、正確な診断が容易にできるようになりました。検査は測定器に息を吹き込むだけの簡単な方法で行えます。当院では、この「呼気NO測定器」での検査を行っています。
ぜんそくは冬場のウイルス感染をきっかけに症状が悪くなるといわれています。長引く咳でお困りの場合には、かかりつけ医や当院へご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome ; 以下SAS)とは、睡眠中に繰り返し呼吸が止まるため、さまざまな合併症を起こす病気です。10秒以上、気道の空気の流れが止まった状態を医学的に「無呼吸」と言います。無呼吸またはそれに近い状態である低呼吸が、一晩7時間の睡眠中に30回以上か、1時間あたり5回以上あるのが睡眠時無呼吸です。
そこに、いびき、夜間頻尿、日中の眠気、起床時頭痛などの症状がみられる場合にSASという病名がつきます。SASの患者さんは日中の眠気により、作業効率の低下、居眠り運転事故や労働災害を引き起こす可能性があります。高血圧、心臓病、脳卒中、糖尿病などとも深い関わりがあります。
SASの多くを占める「閉塞性SAS」はいびきと大きく関わっています。閉塞性SASの患者さんの約93%に習慣性いびきが見られるという報告があります1)。さらに約50%が高血圧を合併2)、高血圧中年男性の約30%が閉塞性SASを合併3)という報告もあります。
閉塞性無呼吸は仰向けで寝ている時に重力の影響などで起こる舌根沈下が、様々な原因(肥満による首回りの脂肪沈着、扁桃肥大、舌が大きい、鼻炎・鼻中隔弯曲、あごの後退、あごが小さいなど)で顕著となり、気道を狭くしたり、塞いだ場合に起こります。
診断はまず自宅での簡易検査から行います。疑わしい場合は専門医療機関で一泊入院により精密検査(ポリソムノグラフィー検査)を行い、確定診断に至ります。
無呼吸低呼吸指数が1時間に20回以上あれば、睡眠中にCPAP(シーパップ)という医療機器を装着する在宅治療の適応になります。また特殊な口腔内装置(マウスピース)を使用する治療法もあります。さらにアデノイドや扁桃肥大がある方には、手術が考慮される場合もあります。予防は肥満を伴う場合の減量、節酒、禁煙など生活習慣の改善になります。
いびきが強い方で日中の眠気や高血圧などがある場合は、SASの可能性があるため、かかりつけ医へご相談ください。

(参考資料)
日本呼吸器学会ホームページ呼吸器の病気、国立循環器病研究センター循環器病情報サービスホームページ、帝人在宅医療株式会社 睡眠時無呼吸なおそう.comホームページ 株式会社フィリップス・ジャパン 無呼吸ラボホームページ
1)日本臨牀. 2000;58(8):11-22
2)JAMA. 2000 12;283(14):1829-36
3)Lancet. 1984 3;2(8410):1005-8

症状まとめページへ