脳神経内科

特色

当科では、脳卒中、認知症、パーキンソン病、てんかんなど神経疾患全般の診療を行っています。

脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の急性期治療

近年、脳卒中医療は大きく変化し、診断技術・治療技術は飛躍的に進歩しています。脳梗塞では、(1)発症から4.5時間以内に血栓溶解薬(rt-PA、アルテプラーゼ)を静脈内投与する治療や、(2)発症24時間以内にカテーテルを使って血栓を回収する治療が行えるようになりました。

血栓回収療法は、頭部画像検査の結果によっては発症24時間まで行えることがあります。こうした治療により、閉塞血管が早期に再開通すれば劇的に症状が改善する可能性があります。また発症時刻がはっきりしない場合でも、頭部画像検査の結果によっては、治療が行えるようになりました。脳卒中を疑った場合には、救急車を要請してできるだけ早く病院を受診することが大切です。

当院では、脳神経内科と脳神経外科の総勢10人が協力して365日24時間体制で積極的に脳卒中診療を行っています。また脳卒中で入院した後は、リハビリテーション・栄養管理・合併症予防(肺炎や下肢静脈血栓など)が大切です。当院では理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・管理栄養士・薬剤師・ソーシャルワーカーらの多職種が協力して、診療に取り組んでいます。

脳卒中の再発予防

脳卒中を再発しないようにきちんと対策を立てる必要があります。とくに脳梗塞では、発症後最初の1年間の再発率が約10%にもなるので、再発予防は大切です。まず動脈硬化に関わる生活習慣(喫煙や多量の飲酒)や生活習慣病(高血圧、糖尿病、高コレステロール血症)を是正しなければなりません。また近年、心房細動(不整脈の一つ)を原因とした脳梗塞が増えています。

当院では必要に応じて経食道心エコーや植込み型心電計などの検査まで行い、徹底的な原因の検索と原因に応じた再発予防を心がけています。頸や脳のある程度太い血管に狭窄が残っている場合には、再発予防のために脳神経外科で血行再建手術を行う場合もあります(頸動脈内膜剥離術、頸動脈ステント留置術、バイパス手術など)。

また脳卒中は全身血管病であり、心臓病・腎臓病・末梢血管疾患の合併が少なくありません。脳卒中の診療では、必ず他の血管病の合併を意識し、各診療科の専門医と連携し総合的な治療を目指しています。

脳卒中患者会(退院後の生活について)

退院してから、自宅でどのようにリハビリ行ったらよいのか、後遺症のしびれにどう対応したらよいのか、再発しないか心配などの悩みをかかえておられる方もいらっしゃいます。そのような患者さんやご家族の方々が月に1回集まって意見交換を行っています。医師や看護師も参加して、専門的なことにはお答えしています。どなたでも参加できます。現在はコロナ感染の影響でWEB開催となっておりますが、関西や関東からもご参加いただくようになりました。

北九州・脳卒中患者と家族の会

神経救急疾患

てんかん、ギランバレー症候群、髄膜炎、脳炎などの神経救急疾患に対応しています。腎臓内科と協力して、血漿交換療法や免疫吸着療法も行っています。

認知症

2021年度から専属の臨床心理士が認知機能検査を施行するようになりました。レビー小体型認知症が疑われる場合には、パレイドリアテストを追加するなど症例に応じた検査を行っています。画像検査では頭部MRI検査に加え、必要に応じて脳血流シンチ、MIBG心筋シンチなど行っています。

パーキンソン病

近年、患者数が増加しており、あと20年はこの傾向が続くものと予想されています。動作緩慢、振戦、筋固縮が特徴で、ご紹介いただく件数が増えました。頭部MRI検査に加え、症例に応じてMIBG心筋シンチやDATスキャンを行います。パーキンソン病のお薬は種類が多いので、相談しながら根気よく行います。

日常診療から得られた貴重な成果は、積極的に学会や専門誌で発表するように心がけています。日常診療、臨床研究を通じて、若手医師の教育、技術習得もわたしたちの重要な課題です。

診療担当表

荒川 大﨑 荒川 大﨑 安田
脇坂 丸山 北村

扱う疾患

  • 脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)
  • 一過性脳虚血発作、一過性黒内障
  • 無症候性頸動脈または脳動脈の狭窄
  • 認知症
  • パーキンソン病
  • てんかん
  • ギランバレー症候群
  • 髄膜炎、脳炎
  • 重症筋無力症など

検査

脳血管障害の診断にはCT・MRI・MRA・超音波検査・脳血流シンチなどを組み合わせて行います。当科では脳血管病変、特に頸動脈病変に対する超音波検査を用いた診断に力を入れています。

脳梗塞の塞栓源の検索に経食道心エコーを行っています。また潜在性心房細動の検出のため植込み型心電計を装着していただくこともあります。

神経疾患に対して神経エコー、神経生理学的検査を積極的に行っています。

脳神経外科との連携で、脳血管血行再建術施行患者やくも膜下出血患者に対しては、周術期経頭蓋ドプラモニタリングにも取り組み、周術期の血行動態の評価に超音波診断を活用しています。また、長期的フォローアップにも様々な超音波検査を応用しています。

また、検査部技師や若手医師も日本脳神経超音波学会認定検査士の認定試験に積極的に挑戦し、技術を磨いています。

また髄液検査、脳波、末梢神経伝導検査、筋電図、MIBG心筋シンチ、DATスキャンなどの検査も日常的に行っています。

実績(2022年)

  2022
脳梗塞(TIAを含む) 148
脳出血 31
脳血管精査 20
パーキンソン病・症候群 30
てんかん 28
末梢神経障害
(GBS・CIDP等)
22
頭部外傷 20
脊椎・脊髄疾患 4
神経・筋接合部疾患 7
認知症 7
視神経脊髄炎関連疾患 1
筋萎縮性側索硬化症 1
その他の神経疾患 9
その他 101
合計 429

※同一症例の複数回入院あり

  • 研究名:多施設共通データベースを用いた脳卒中急性期患者の病態解明に関する疫学研究

こんな症状ありませんか?

「ものわすれ」と「認知症」の違いについて教えてください。
加齢にともなう記憶力の低下は、だれにでも起こります。老化によるものわすれは、「人の名前が出てこない・モノをどこに置いたか忘れる・その部屋に何をしに来たか忘れる」などが特徴です。多くの場合、何かのきっかけや時間の経過で思い出すことができます。
一方、認知症は「食べたこと自体を忘れる・買い物に行ったこと自体を忘れる・日付や曜日、場所などがわからなくなる、捜し物は誰かに盗られたと思う」などが主な症状です。
「ものわすれ」が進むと、認知症になるのですか。
健常者と認知症の中間にあたる、「軽度認知障害(MCI)」というものがあります。このMCIの状態を放置すると、認知症に進展する人の割合が、年平均で10%に及ぶというデータもあります。MCIの段階で、定期的な運動や食事などの生活習慣を見直すことで、症状が改善したり、認知症の発症を遅らせる場合があります。早期にMCIに気づき、対策を行う事が重要です。
どんなときに受診すればよいのでしょうか。
認知症には、脳の神経細胞が変性して徐々に進行していくアルツハイマー型認知症などの認知症と、正常圧水頭症、硬膜下血腫など脳の急性の病気が原因で、一時的に認知症になり、手術などの治療により改善する認知症タイプがあります。
ご本人やご家族が「認知症かな?」などと異常を疑った時には、早期に医療機関に相談してください。

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