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Dr.インタビュー

荒川修治脳卒中・神経センター長に聞く「脳卒中・認知症など高齢化で増える脳疾患に挑む」 

2020年 8月11日 16:09

進む高齢化で今後、増加が予想される脳の疾患は何ですか。

荒川センター長:明らかに脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の患者さんは増えていくと思います。脳卒中は男女とも50歳代から増え続け、2025年には330万人のピークに達すると予想されています。

脳卒中は命にかかわりますし、後遺症が怖いです。異変に気づいたら、すぐに病院を受診することがやはり大事でしょうか。

荒川センター長:脳卒中の兆候はFASTがキーワードです。図をご覧ください。このうち、どれか一つでも当てはまったら、医療機関の受診をお勧めします。脳卒中は時間との闘いです。命を守り、後遺症を回避するために、1分1秒でも早く受診しましょう。(図)

脳卒中のなかでも発生者数70%を占める「脳梗塞」は点滴投与することで、血管の詰まりを再開させることができます(血栓溶解薬アルテプラーゼ=t‐PA)。しかし、症状が発生してから4.5時間以内に点滴を開始しなければなりません。

4.5時間以内であれば、誰でも投与できるのですか?

荒川センター長:4.5時間という制限のほかにもさまざまな基準項目があり、それを満たした方に投与します。t-PAは脳卒中専門医がいて、24時間体制で受け入れ可能な病院でのみ行います。当院はtPAの治療可能な施設です。

t-PAが適応でない場合やt-PAで改善しない方への治療は?

荒川センター長:当院では「血栓回収療法」が可能です。脳の血管の詰まったところまでカテーテルを挿入して、血栓を絡めて取り除くという治療です。医師の熟練した技術が必要で、当院では脳血管内治療の指導医を中心に、良好な治療成績をおさめています。八幡東地区では当院のみが行っています。血栓回収療法は治療可能時間が、発症後24時間まで適応されます。猶予時間が24時間あるとはいえ、脳卒中の治療は“早期受診”、“早期治療開始”という「時間」が非常に重要です。
患者さんや周りの人が異変に気づき、できる限り早く病院に来て頂くことも、脳梗塞の治療ではカギを握ります。

脳卒中の予防は脳ドックで可能ですか?

荒川センター長:脳ドックではMRIによる脳梗塞と脳の萎縮の診断、頸動脈エコーによる動脈硬化の有無、血圧、心電図、血液検査などで脳卒中や脳腫瘍、今後の脳卒中のリスクを診断します。40歳以上で一度も受けたことがない方、生活習慣病がある方、ご家族に脳血管疾患の発症歴がある方などは、一度受けられることをお勧めします。

ほかに増えている疾患はありますか?

荒川センター長:やはり認知症の患者さんは多いですね。単なるもの忘れと認知症を区別して、早めに認知症を診断する「ものわすれ外来」にもご家族と一緒に受診される患者さんが増えています。また加齢に伴って、パーキンソン病を発症する方も多いです。これらはcommon desease(コモン・ディジーズ=一般的な病気)と言われるほどです。どちらも完治が難しい病気ですが、今はいろいろな薬があり、その方にあった薬で進行を抑えることが可能です。

当院は脳神経内科の医師5名、脳神経外科の医師3名と脳のスペシャリスト8名が24時間365日、診療にあたっています。

荒川センター長:八幡地区でもっとも医師数が多いです。もちろん、数だけでなく実力も兼ね備えています(笑)。内科から外科への、スピーディーかつスムーズな連携治療が当センターの特徴です。急性期脳卒中だけでなく、てんかんやギランバレー症候群、髄膜炎、脳炎など神経疾患全般に対応しています。八幡地区から、脳卒中はじめ脳疾患で苦しまれる方を一人でも多く救いたいと、スタッフ一同気持ちを一つにしています。
 

荒川 修治(あらかわ しゅうじ)脳卒中・神経センター長、脳神経内科部長
【専門分野】脳卒中・神経疾患全般
【資格】日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本神経学会神経内科専門医、
日本脳卒中学会脳卒中専門医、日本脳循環代謝学会評議員、日本認知症学会専門医、
日本老年医学会老年病専門医・指導医

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