Dr.インタビュー
末永賢也整形外科部長に聞く 「からだの痛み、機能障害のウラにひそむ整形疾患について」
2020年 8月25日 09:04
高齢になるにつれて、あちこち体の痛みを訴える方が増えます。つい「年だから」とがまんしがちですが、ある程度の痛みが出るのは仕方がないことでしょうか。
そうですね。年齢を重ねるにしたがって、体のあちこちに痛みが出やすくなります。そうしたいろいろな部位の痛みのほかにも「手が震える、足元がふらつく、よろよろ歩く」などの症状を「年のせい」と自己判断される方がおられます。しかし、気を付けなければいけないのは、その裏に治療の必要な病気が潜んでいる可能性もあります。
気負いなく相談できる「かかりつけの先生」をつくっておきましょう。
整形外科の疾患が命に直結することは少ないかもしれませんが、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)に密接に関係します。
そのとおりです。整形外科の対象部位は首から足先まで、広範囲にわたります。なかでも股関節、膝関節、背骨に関する痛みや麻痺、機能障害などで大変多くの方が悩まれています。体を動かすことが難しくなると、心身に影響を及ぼします。機能低下などを起こさないためにも、体を積極的に動かすようにしましょう。お子さんやお孫さんがおられれば、子どもの頃から骨を丈夫にする食事や運動に取り組むようにしていきましょう。
大人や高齢者はどうすれば自分の骨や関節を長く健康に保てるのでしょう。
まずはとにもかくにも外へ出て運動をすることです。運動により骨は強くなり、筋肉がついた結果、関節も長持ちします。「運動しても何も変わらないものね」と思われるかもしれません。
例えば、若いときの筋肉痛と年を重ねてからの筋肉痛とでは、筋肉疲労を感じるまでの時間や回復までの時間が違うと感じませんか。高齢になるにつれ、回復までの時間が少し長くかかってしまうのです。
それと同じで、体力がつくのも少し時間がかかるのです。効果の出ない人はいません。
運動をしていることは心臓や肺の機能を高めるとともに、痛みを軽減することも期待できます。つまり、長く健康でいられるということです。
そのために私たちは適度な運動を勧めながら、生活習慣を見直す指導も行っています。もし、それで痛みが軽減しなければ服薬や湿布などで対応します。手術は最後の手段です。
そうなのですね。これまでは「整形外科」=「手術」というイメージが強かったです。
私の専門の脊椎疾患でいうと、病気が判明して実際に手術が必要になるのは何十年も先になることもあります。その間、ずっと症状を見守り続けるのが整形外科医の役割だと考えています。患者さんのお子さん、お孫さんと3世代を診察するほど、長いお付き合いになることもめずらしいことではありません。
高齢化率が非常に高い八幡東区ですが、整形外科疾患で多い疾患は何ですか。
当地域で最も多いのは高齢者の骨折です。転倒して手をつく、尻もちをつくなどが原因で足の骨や背骨を折ってしまいます。骨折の治療の一方で、「転びにくい体にする」「骨を折れにくくする」といった指導も高齢者には必要です。習慣的によく歩く方、歩かない方の骨は明らかに違います。骨は嘘をつかないですよ(笑)。
当院の整形外科の特徴は?
まずは高齢の患者さんが多いこと、そして多くの内科的な持病を抱えている人が多いということです。高齢の方に加えて透析の方や糖尿病のある方では骨がもろいため、骨折しやすいですし、治療にも時間がかかります。内科の先生の力も借りて、患者さんの治療に当たっています。
当院には肘、膝・股関節、脊椎・脊髄の専門医がいて、それぞれがお一人お一人の状態や生活背景なども伺いながら、診察を行うように心がけています。
メッセージをお願いします
今はたとえ90歳を超えられていても、手術が必要な状態で、その方が望んでいるのであれば、体力面など様々なことを考慮した上で手術を行っています。
皆さん、いくつになられてもできるだけ自分のことは自分でしたいと思っていると思います。外来では「トイレくらいは」「食事はお箸で」など希望を伝えてこられることがよくあります。
それができなくなると、身体能力が下がり、認知機能さえ衰えていきます。それを防ぐために、万全の体制で私たちは高齢の方であっても、積極的に治療をしていこうと思っています。
若い方も高齢者もその方に寄り添い続けるのが、我々、整形外科医の使命と思って、日々頑張っています。
末永 賢也(すえなが けんや)整形外科部長
【専門分野】脊椎・整形外科一般
【資格】日本整形外科学会専門医・日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医・日本整形外科学会運動器リハビリテーション医