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こまめな水分補給の「こまめ」ってどのくらい?

2025年 8月06日 17:06

1日にどれくらい水を飲めばいい?

暑さ指数が30度を超え、熱中症で救急搬送される方が増加しています。
この時期は「熱中症、脱水症、脳梗塞などの予防のために水分補給をしましょう」の大合唱になりますが、何をどのくらい飲んだ方が良いのかという話はあまり聞きません。
今回は水分補給について触れたいと思います。

室内でも脱水症・熱中症をおこしやすい

成人男性の場合、体の約60%は水分ですが、水分は脂肪より筋肉に多く含まれているため、女性55%、高齢者50%程度と少なくなります。
高齢者は腎臓で水を保持する能力も、排泄する能力も落ち、「(こう)(かつ)」という飲水行動を起こすための危険信号を感じにくいため、夏に室内であっても脱水症や熱中症をおこしやすいと言われています。また、体温調節機能が未発達な子供や症状を訴えられない障害者も気を付けなければなりません。

1日に必要な水分量は体重1kgあたり30~35mlで、60kgの成人だと1日1,800~2,100mlの水分補給が必要となります。通常は食事から水分を1,000mlとっているため、1日1,500mlの水分を補給すれば、事足りるはずですが、汗をかいたり食事摂取不良などがあれば、その分の水分補給が必要となります。

夏は汗で1リットル喪失することも

夏は汗で1日に1リットル以上喪失することも希でなく、体重の1%の水分を失うと口喝を感じ、 2%では集中力や判断力が低下し、3%以上では筋肉のけいれんや体温調節機能の障害が起こります。
5%以上では、吐き気やめまい、極度の疲労感が現れ、熱中症の危険性が非常に高くなります。
体温調節機能の障害がでると体温があがり、※不感蒸泄(ふかんじょうせつ)(皮膚や呼吸を通して水分が失われること)が増えるためさらに多くの水分を喪失し、40度以上の深部体温が続くと生命予後が悪化することが知られています。

飲み物の選び方と飲むタイミング

汗は単なる水ではなく、塩分(ナトリウム)を約0.3%含んでいるため、1Lの汗をかくと約3gの塩分が失われることになります。
汗をかくと塩分摂取が必ず必要というわけではありませんが、運動などで大量に汗が流れ続けるような事態では、塩分を同時に摂取する必要があります。スポーツ飲料は、水分、糖質、電解質を含む飲料で、激しい運動時の脱水を防ぐために適していますが、糖分も含まれているため、血糖が高い人には不向きです。
また汗が少ないときは、スポーツ飲料ではなく水で十分です。
経口補水液は塩分とクエン酸が入っており、小腸で吸収されるように設計され、水に比べて30分程度早く吸収することができますが、高価であり熱中症予防のために飲む必要はなく、脱水症状になったときに利用すべきです。また、カフェインやアルコールを含む飲料は利尿作用があるため避けましょう。 

飲むタイミングは口喝を感じなくても、暑い環境では、できるだけ涼しい環境に移動し、こまめに補給することが重要です。口喝があれば水分補給が必ず必要ですが、「長時間尿が出ない、尿が少量で黄色の濃い色である」ときには、積極的に飲水を行うことをお勧めします。

「水中毒」にご注意を!

最後に、水は飲みすぎれば「毒」になることも知っておきましょう。
実際に飲みすぎで、水中毒(低ナトリウム血症)になり、多くの高齢者が亡くなっています。
冒頭にも書きましたが、高齢者は腎臓で水を排泄する機能も低下しており、6~9月の暑い時期に水分を取りすぎて水中毒となり、救急搬送になる人が増加します。
また、腎臓や心臓に病気のある人は、水分の取りすぎで心不全や肺水腫となり命の危機にさらされることがありますので、主治医に確認して熱中症予防をしましょう。

製鉄記念八幡病院 理事長・院長 柳田太平(腎臓内科)

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