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喫煙者、加熱式タバコ愛好者や受動喫煙も要注意! COPD(慢性閉塞性肺疾患)

2018年 11月27日 16:48

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは?

COPDは喫煙者がかかる代表的な慢性呼吸器病で、喫煙経験がある40才以上の方で咳や痰、ゼーゼーいう呼吸、労作時(例えば階段や坂道を登る時など)の息切れなどが徐々に進行、あるいは風邪をこじらせるなどして比較的急に進行しながら、最終的に呼吸不全や心不全、全身消耗にいたる病気です。進行するまでに、症状が乏しい場合もあり、注意が必要です。

COPDの原因と成り立ち

原因はタバコの煙(受動喫煙を含む)を主とする有害物質を長期に吸入することです。これらの有害物質が空気の通り道である気管支や、酸素の交換を行う肺胞などに障害をもたらし、空気の出し入れがうまくいかなくなって、通常の呼吸ができなくなり、息切れにいたります。

COPDの実態

COPDは喫煙者の20%前後、ほぼ5~6人に1人がかかる可能性があり、高齢者ほど罹患者が多くなります。日本では推定患者は500万人を超えるとされていますが、実際に治療されている人は数十万人に過ぎません。
日本でCOPDは死因の第10位に入ります。米国では心血管疾患や脳血管疾患による死亡率減少に対して、COPDによる死亡率は増加しているというデータがあります。
またCOPDは肺がんや心血管疾患の高リスク因子とされるとともに、その他の全身性炎症やいろいろな合併症・併存症がみられることも多く、患者さんの予後に大きく影響します。

COPDの診断

主な症状は呼吸困難(息切れ)、慢性の咳・痰、喘鳴(ゼーゼーいう呼吸)、体重減少、食欲不振などです。これらの症状があり、長期の喫煙歴がある方で「スパイロメトリー」という肺活量などを測定する器械による呼吸機能検査で閉塞性換気障害と判定された場合、COPDと診断できます。


COPDとよく似た病気で代表的なのは気管支ぜんそくです。両者を見分けるのは難しい場合があります。厄介なことにCOPDの15〜20%にぜんそくが合併していると見込まれており、気管支ぜんそくが関わる場合には呼吸器専門医の診断が必要になることもあります。

COPDの予防

最も大切で有効な手段は禁煙です。
COPDを発症してしまった場合にも、禁煙することで病気の進行を明らかに鈍化させることができます。加熱式タバコなどの新型タバコについても、今のところ証明するデータは不十分ながらCOPDについて有害であると考えられており、新型タバコも含めて禁煙を推奨します。

COPDの治療

薬物療法は吸入薬療法が中心になります。吸入薬療法は気管支を拡げる成分などを微量の粉末、ミストおよびエアゾールとして専用の吸入器具で吸入する治療で、多くの患者さんが簡便かつ確実に治療を受けることができます。また診断の項でも触れましたが、気管支ぜんそくを合併している場合には治療内容に専門的判断が必要になる場合があります。
非薬物療法には禁煙、感染予防(インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン接種を含む)、呼吸リハビリテーション、自己管理の教育、栄養管理、酸素療法、換気補助療法などがあり、薬物療法と併用して病態に応じて行われます。

まとめ

COPDを予防できる最も有効かつ確実な方法は禁煙です。減煙では意味がありません。新型タバコを含めて禁煙が勧められます。もし発症してしまったとしても、早期に診断して禁煙を含めて早期に対応することで多くの場合、病状が進行することは確実に防ぐことができます。重症化してしまった場合にも治療の手だてはありますので、不安に思わずに、病気を知りしっかり病気と向き合うことが大切です。            (製鉄記念八幡病院呼吸器内科部長 古森雅志医師)

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