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尿検査あなどることなかれ~尿蛋白・尿潜血が陽性だったら~
2025年 1月31日 16:18

腎臓のはたらきと腎臓病の特徴
腎臓は、背中の腰の上あたりに左右2個存在する臓器です。腎臓には、「身体の余分な老廃物や水分を尿として排出する」、「ミネラルのバランスを整える」、「血液を作る造血ホルモンを産生する」など多彩な働きがあります。
一方で「沈黙の臓器」ともいわれ、病気が存在しても、ほとんどの人は自覚症状に乏しいことが特徴です。一見、健康な人にも、腎臓病が隠れている可能性があり、気づいたときにはもう手遅れ、ということが起こり得ます。長年進行した腎臓病は回復が難しく、透析や腎移植といった腎代替療法が必要になります。
自分の腎臓が大丈夫かどうかは、定期的に自分でチェックするしかありません。そんな腎臓病を早期に発見する貴重な機会が、健康診断での「尿検査」です。
尿検査でわかること
尿は腎臓で作られ、尿管、膀胱、尿道を通って体の外に排出されます。この通り道のどこかに問題があると、尿に異常がみられます。尿検査の項目の中で、腎臓病と関連が深いのが「尿蛋白」「尿潜血」です。
① 尿蛋白が陽性と言われたら
健康な人の尿にも微量の蛋白は含まれていますが、何らかの原因により腎臓の組織がダメージをうけると、身体に必要な蛋白質が大量に尿に濾過されて排泄されてしまいます。
健診で尿蛋白が陽性だからといって、病気とは限りません。
一過性の蛋白尿(生理的蛋白尿)の可能性がありますので、まず医療機関で再検査します。
健康診断で行う尿検査は「定性」検査であり、実際の尿蛋白の量は分かりません。医療機関ではどのくらいの量の尿蛋白が出ているのかを調べる「定量」検査を行います。
外来で行う尿検査では「尿蛋白/尿クレアチニン比(1日尿蛋白に相当)」として評価し、この比が0.5以上の場合は病的な尿蛋白の可能性が高くなります。病的な尿蛋白は、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、糖尿病性腎症などさまざまな腎臓病が疑われます。
尿蛋白は腎機能が低下する前から出現することが多く、尿蛋白が多くなればなるほど、将来透析へ至る危険性が高いことが知られています。
② 尿潜血が陽性と言われたら
尿に血液が混入した場合に陽性(血尿)になります。
健診の尿検査で「+」が出ても、顕微鏡で赤血球が見えなければ血尿とは言いません。
まずは医療機関での再検査が必要です。
尿検査で初めてわかる血尿を顕微鏡的血尿といい、肉眼で判断できる血尿を肉眼的血尿といいます。血尿の原因は、腎臓で尿が作られる時に血液が混じる場合と、尿が尿管や膀胱に流れていく過程で血液が混じる場合があります。
前者の専門は腎臓内科で、後者の専門は泌尿器科になります。
肉眼的血尿の原因は、尿路結石や感染、50歳以上では膀胱がんなどの腫瘍の可能性が高く、まず泌尿器科への受診をおすすめします。
一方、内科疾患としては、風邪や扁桃炎の後に血尿がみられ、蛋白尿も陽性の場合、顕微鏡の検査で赤血球が変形していたり(変形赤血球)、腎機能障害を伴う場合に、糸球体腎炎という病気の可能性があります。糸球体腎炎の確定診断には入院して、腎生検という精密検査が必要になります。
腎臓病の早期発見のために
尿検査はとても簡便、安価で、かつたくさんの情報を与えてくれます。近年、次々と腎臓病の治療薬が開発され、早期発見、早期治療により完治も望める時代になりました。
自分の腎臓に替えはありません。どんなに忙しくても、健康診断は受診しましょう。
もし尿検査で異常を指摘されたら、必ず医療機関を受診しましょう。それにより皆さんの大切な腎臓を、病気から守ることができるかもしれません。
製鉄記念八幡病院 腎臓内科部長 冷牟田 浩人(ひやむた ひろと)が執筆しました。
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