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乳がんについて知ろう~基礎のポイントから最近の情報まで~
2025年 5月26日 10:05

日本では乳がんの罹患率が年々増加傾向です
国立がん研究センターのデータによると、2020年には91,531人が乳がんと診断され、女性のがん罹患率の第1位となっています。乳がんと診断される人は40歳代から急激に増加し、70歳代がピークです。29歳以下は0.5%、30~34歳が1.2%、35~39歳が3.2%で、40歳以上で95%が発症しています。
当院の治療実績
乳がんの特徴
乳がんは、乳腺組織に発生するがんです。早期の乳がんは自覚症状がないことが多く、進行するとしこりや乳頭からの分泌物、皮膚の陥没などが現れることがあります。ほかのがんと同様、進行すれば骨や肝臓や肺など全身に転移します。
自分で気づける唯一のがん
乳がんは自分の目や手で異変を感じることができます。定期的な乳がん検診に加え、些細な変化にも気づけるように、ご自身の乳房に日頃から関心を持ちましょう。
マンモグラフィ検査と乳腺エコー検査の違いは
日本では、40歳以上の女性に2年に1度のマンモグラフィ検診が推奨されています。
マンモグラフィ検査は乳房を圧迫してX線撮影する検査です。エコー検査より微細な石灰化を発見するのに優れています。痛いと感じる方がいますが、検査機器の進歩によりその割合は減少しています。当院では女性の放射線技師(MMG撮影資格取得者5名)が検査を行います。
乳腺エコー検査は超音波を使って、乳房の内部を観察する検査です。放射線被ばくの心配がなく、高濃度乳腺の方でも診断しやすいというメリットがあり、40歳未満の女性に推奨されています。
ただし、検査者の技量に左右されることやマンモグラフィと比べて検査時間が長くなる傾向があります。当院では日本乳がん検診精度管理中央機構に認定された女性臨床検査技師(JABTS認定検査技師3名:A判定2名、B判定1名)が検査を行います。
乳がん検査で「要精密検査」が出たら
「要精密検査」と判定された場合は、精密検査を受ける必要があります。精密検査では、追加の画像検査(造影MRIなど)や組織検査(針生検など)を行います。その結果、乳がんと診断された場合は、さらに追加の画像検査(造影CT検査、骨シンチ検査など)を行い、治療法について医師と相談します。
治療に関するトピックス
近年、乳がん治療は大きく進歩しています。その一つが「ラジオ波焼灼術」です。これは、1.5cm以下の小さな乳がんに対して、針を刺して高周波電流でがん細胞を焼き殺す治療法です。外科手術に比べて身体への負担が少なく、早期乳がんの治療選択肢の一つとして期待されています。1.5cm以下の乳がんを発見するためには一層、乳がん検診の役割が重要になります。(当科でも、早期導入に向けて検討・準備を進めています)
また、これまでの抗がん剤や内分泌療法、分子標的治療に加えて新たに抗体薬物複合体(ADC:Antibody-Drug Conjugate)という種類の薬物が次々と乳がん治療で使用できるようになりました。
従来の治療法で効果が得られなかった患者さんや特定のタイプの乳がん患者さんにとって、新たな治療選択肢となる可能性があります。これらの治療法は、患者さんの状態に合わせて選択されます。
乳がんの早期発見・早期治療は、予後を大きく左右します。定期的な乳がん検診とブレストアウェアネスを心がけ、ご自身の乳房の健康を守りましょう。
製鉄記念八幡病院 乳腺センター長・乳腺外科部長 髙浪英樹(たかなみひでき)が執筆しました。 製鉄記念八幡病院 乳腺外科ページへ