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足の痛みやしびれで困っていませんか?腰部脊柱管狭窄症
2019年 5月22日 15:16
私たちは神経を介して、脳からの信号を体のあちこちに届けることで、話したり歩いたりすることができます。その神経の通り道に異常があると、うまく話したり、歩いたりすることができません。
脊髄は背骨にあるトンネルを通って、顎より下の体のあちこちに神経の枝を出しています。脳が頭蓋骨に守られているように、脊髄もトンネルで守られていて、そのトンネルを脊柱管と言います。脊柱管は骨、靭帯、椎間板で構成されています。人は年をとると、骨や椎間板が変形し、靭帯の厚みが増してきます。そうなると脊柱管は狭くなり、脊髄が圧迫を受けて症状が出てきます。
どのような症状が出るのでしょうか?
病気の名前に腰部とついていますので、腰痛があると思われがちですが、実際は「立っている時や歩いている時に足が痛い」、「しばらく歩くと足の痛みで歩けなくなり、またしばらく歩くと歩けるようになる」、「足がしびれる」といった症状が多いです。
ほかに、お尻や腰に痛みがある、しびれる場所が足のあちこちに移動する、トイレが近い・間に合わないという方もいます。
「何もなしでは歩けないけど、スーパーでカートを押して歩いている時は平気」、「歩いているとだんだん前かがみになる」、「背中をそらすと足に痛みが出る」という人も狭窄症かもしれません。
どうして狭窄症になるのでしょうか?
「老化」が大きな要因となります。老化により靭帯が分厚くなったり、骨が変形してしまうからです。MRI検査をすると80歳以上の約80%に狭窄症が見つかると言われています。幸いに全員に症状が出るわけではありません。若い頃から腰に負担がかかる職業に携わってきた人、運動習慣がなく筋力の低下した人に出やすい傾向があります。しかし、高齢化社会の現代では、狭窄症で困っている人は600万人という統計結果もあり、年に約2万人の患者さんが手術を受けています。
どんな治療をするのでしょうか?
痛みが主体の人には鎮痛剤、歩けないことが主体の人には血流改善薬を使用します。まず困っている症状を和らげながら、コルセットをつけたり、リハビリをしたりします。
リハビリには①痛みを和らげ②筋肉のコリをほぐし③関節の動きをよくして、普段の生活がしやすくなる効果があります。
リハビリで脊柱管の狭窄そのものは解消されませんが、症状の緩和効果および病態の増悪・再発の防止が期待されます。
痛みがなかなか取れない場合には、ブロック治療をすることもあります。前かがみになると症状が緩和されるので、自転車やシルバーカー、杖を使うなど、日常生活の見直しも指導していきます。
こうした治療を3ヶ月程度続けてもよくならない場合や、治療中に排尿障害(尿もれや頻尿)、排便障害を起こした場合、足の力が弱ってきた場合(筋力低下)には手術を行います。手術が必要な状態になってから長い時間が経過すると、より神経の状態が悪くなり、障害が残ってしまいます。
手術はこんな方法で行います
除圧と固定の2つに分けられます。除圧は脊柱管を狭くしている骨や靭帯や椎間板を削り、脊柱管を拡大する方法です。
固定は背骨にぐらつきがある場合や大きなずれがある場合に行います。いずれの方法も年々、患者さんの負担が少なくなるように工夫が加えられ、傷も小さく、術後の痛みも少なくなり、手術翌日から歩くことができるようになっています。
病院には、いつ行けばいいでしょうか?
がん、心筋梗塞、脳卒中などの生命に直接関わる病気では、早期発見・早期治療がとても重要です。腰部脊柱管狭窄症は加齢現象とも言えるので、早期発見に努める必要はありません。腰の痛みや足の痛み・しびれなどの症状が出た時点で、整形外科への受診を検討してください。
予防するには?
最も重要なことは、毎日の運動です。よく「どんな運動をすればいいですか?」と聞かれるのですが、10分でもいいので毎日歩くことがいいと思います。歩けない人は、何かにつかまってスクワットを1日10回以上、毎日続けるといいでしょう。回数や時間が少なくても、毎日運動をしている人の方が、時々たくさん運動をする人よりも健康で、手術になる可能性が少ないことがわかっています。明日から少しで良いです。運動を始めましょう。
(製鉄記念八幡病院 末永 賢也 整形外科担当部長に聞きました)