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慢性腎臓病と健康診断の深いつながり!
2024年 9月12日 13:37
腎臓のはたらきって?
腎臓は、腰の上あたりに左右一つずつあります。そらまめの形をした握りこぶし大の臓器です。
腎臓には次のように、多彩な働きがあります。
・身体の余分な老廃物や水分を尿として排出する
・電解質のバランスを整える
・血液を作る造血ホルモンを産生する
・骨を維持するビタミンDを活性化する
8人に1人が慢性腎臓病
慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)とは、腎臓の働きが徐々に低下してしまう病気です。
日本では約1,400万人、国民の8人に1人はCKD患者で、新たな国民病とも言われています。
◆CKDと診断される基準
- 蛋白尿や血尿などの検尿異常、腎臓の形の異常、腎組織の異常
あるいは
- 腎機能低下(糸球体濾過量:eGFR <60ml/min/1.73m2)が3か月以上続いたとき
ほとんどの人が自覚症状に乏しいことが特徴で、一見健康な人にもCKDが隠れている可能性があります。知らないうちに病気が進行していくと、足のむくみ、息切れ、疲労感、食欲不振などの症状が出現します。
腎機能が5~8%まで低下すると透析や腎移植が必要となります。また、CKDが進行するほど、脳卒中、心筋梗塞といった命に関わる心血管病を発症する確率が増加します。
CKDは、腎臓だけでなく全身の病気に関連しているのです。
健康診断でチェックしよう!検尿異常と「eGFR」値
CKDになる原因は多数ありますが、まずは高血圧、糖尿病といった生活習慣病です。過食、大量飲酒、喫煙、運動不足などは生活習慣病を発症させます。放置していると、知らないうちにCKDが発症、進行してしまいます。
自覚症状の乏しいCKDを発見する貴重な機会が、健康診断です。
多くの健康診断では「尿検査」と「eGFR」が測定項目に入っています。尿蛋白、尿潜血陽性、eGFR低下を指摘されたら、CKDの可能性があります。また、血圧が高い、血糖値が高い、BMIが高いなどの健診結果も、CKDの原因となる生活習慣病の危険信号です。大切なことは健診異常を指摘されたら、たとえ元気であっても一度、医療機関を受診することです。一回の健診異常で必ずしもCKDであるとは限りません。あわてずにまずは受診しましょう。
自分の腎臓を守りましょう
近年は、SGLT2阻害薬、新規MR拮抗薬など新しい治療薬が登場し、CKDの発症、進行予防に非常に効果があると言われています。慢性糸球体腎炎で最多であるIgA腎症という疾患は、早期であれば扁桃摘出術とステロイド治療の組み合わせにより、8-9割は完治すると報告されています。
自分の身体は一つであり、替えはありません。
元気で長生きするには、まず自分の身体の状態を知ることが重要です。どんなに忙しくても、健康診断は受診しましょう。もし検尿異常やeGFRの低下、高血圧や糖尿病の可能性を指摘されたら、必ず医療機関を受診しましょう。それにより皆さんの大切な腎臓を救うことができるかもしれません。
製鉄記念八幡病院 腎臓内科部長 冷牟田 浩人(ひやむた ひろと)
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