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心臓病の8割を占める「狭心症」と「心筋梗塞」。突然死から身を守るために
2017年 3月15日 10:14
(心臓カテーテル検査科部長 加世田 繁)
心臓は1日に約10万回、一生を80年とすると約30億回も動き続けます。働きものの臓器であるがゆえでしょうか。心臓病はがんに続いて、日本人の死因第2位となっています。心臓病の中でも、とくに多いのが狭心症・心筋梗塞で年間約8万人の方が亡くなっています。
「動脈硬化」が引き金に
心臓は全身の血管に血液を送る「ポンプ」の役割をしています。この心臓にも活動をするための酸素と栄養が必要で、心臓の表面を冠状に覆っている「冠動脈」が、酸素や栄養を運んでいます。
冠動脈が狭くなったり、詰まったりしたときに、心臓の働きが妨げられ、狭心症や心筋梗塞が
起こります。
冠動脈の狭窄は動脈硬化が原因です。動脈硬化は動脈が硬くなり、冠動脈の内側の壁にコレステロールの固まり(プラーク)がたまり、血管が狭くなることで生じ、糖尿病や高血圧、脂質異常などの生活習慣病や加齢、喫煙、ストレスなどが影響して進行します。
狭心症のサインは
ときどき胸が締めつけられるように痛んだり、押しつぶされそうに感じることはありませんか。
5分ほど休むと治まる。それは狭心症のサインかもしれません。
狭心症には「労作性(ろうさせい)狭心症」と「血管攣縮性(れんしゅくせい)狭心症」の二つがあり、労作性狭心症は運動したり、重い物を持つなど、心臓に負担がかかった時に起こり、しばらくすると治まります。これも動脈硬化が原因で、冠動脈の内側が75%以上狭まると、発症の危険性が高くなるといわれています。このような症状が現れる頻度が増え、痛みの強さや持続時間が増大する場合、「不安定狭心症」といって、心筋梗塞になる可能性が高くなるため、注意が必要です。
血管攣縮性狭心症は深夜や明け方、寒いときなどに起こり、血管の痙攣が原因とされています。
狭心症は胸の痛みだけでなく、胃や歯、肩などの痛みを訴える方もいらっしゃいます。自覚症状がある方は、一度、かかりつけ医への受診をおすすめします。
心筋梗塞のサインは
心筋梗塞は冠動脈の内側にたまった、プラークの破裂が原因で起こります。プラークが破れると、その傷を修復しようと血液中の成分が集まり、それが血栓となり、血管を完全に塞ぎます。
これが心筋梗塞です。
激しい痛みが15分以上続き、最悪の場合、心停止になる場合もあります。もともと破裂しやすい要素をもつプラークに、ストレスや血圧上昇、冠動脈の痙攣などの外的要素が加わり、破裂します。それほど血管が狭窄していなくても発症します。
心臓の検査とカテーテル治療
一般的に心臓病検査は心電図、心エコー(超音波)、心筋シンチ(心臓の血液の流れを映す検査)、CT検査などを行い、異常があれば心臓カテーテル検査を行います。
「カテーテル」は直径2㎜ほどの細い管のことで、手首、ひじ、足の付け根などの動脈から心臓まで挿入し、造影剤を入れ、冠動脈の詰まりや狭くなっている場所や程度を調べます。
検査時間は通常10~30分間。局所麻酔下で行うため、痛みなどはありません。当院では原則、2泊3日の入院が必要です。
狭心症の治療は、薬物療法、カテーテル治療があります。カテーテル治療は、冠動脈の詰まりや狭くなっている部位を風船で膨らませ、血液の流れを回復する治療法です。
いまは「ステント」という金属の編み目状になった筒を、血管の内側に留置する方法が主流で、ステントには、血管の再狭窄を予防する薬剤がしみこんでいるため、血管の再狭窄率は10%以下と、大変成績が良くなっています。治療は30分から1時間程度で終了します。入院期間は4泊5日です。
心臓病は予防できる
心臓病は予防が大事です。糖尿病や高血圧などの生活習慣病をお持ちの方は、年に1、2回、定期的に心電図やレントゲン検査を受けましょう。不整脈の有無など、心臓の働きに変化がないかを確認することで、心臓病の早期発見・予防につながります。