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女性ならだれでも罹患の可能性がある「骨盤臓器脱」。どんな病気?
2018年 10月19日 09:10
骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)とは
女性の骨盤の中にある子宮、膀胱、直腸が下がってきて、腟の中に落ち込み、外に飛び出す病気です。最も多い症状が、「股の間にピンポン玉のようなものが触れた」というものです。
ほかに「歩く時に何かはさまった感じがある」「重いものを持って歩くと何かが出てくる」といった症状もあります。
重症になると、常に腟から下がっている状態にもなります。また、尿もれや頻尿などの症状を伴うことも多くみられます。
わが国での骨盤臓器脱の頻度について、残念ながら報告はありません。
欧米の研究によれば、自然分娩を経験した女性の約3割程度に骨盤臓器脱が見られており、必ずしも珍しい病気ではありません。
骨盤臓器脱の治療は?
治療は、保存療法と手術療法に分けられます。
保存療法としては、比較的程度の軽い症状の女性には「骨盤底筋訓練」があります。体を安静にして腟と肛門を絞めたり緩めたりする運動で、特に尿漏れなどには有効であると報告されています。
→ 骨盤底筋体操はこちら
症状の程度が強くなると、ペッサリーというリング状の装具を入れ、下がった臓器を元の位置に戻す方法があります。自然脱出や出血などがみられることがあり定期的な診察が勧められます。
手術療法としては
2000年から人工物であるメッシュを用いて、子宮を温存する経腟的骨盤臓器脱修復手術がフランスで開発され日本でも行われるようになりました。その後、同様にメッシュを使用して腹腔鏡下に腟壁と仙骨を固定する腹腔鏡下仙骨腟固定術が2016年に保険で行えるようになりました。
メッシュを使用しない方法として、従来から行われてきた子宮を摘除し、膀胱や子宮の周りの組織を縫い縮める手術療法、腹腔鏡下に仙骨子宮靭帯を縫縮する方法などがあります。
専門家に相談されて、どの方法がもっともご本人に適しているかアドバイスを受けるのが良いと思います。
症状の性格から相談をためらう女性も多いと思いますが、このようなお悩みをお持ちの女性は多くおられます。お気軽に相談していただけたらと思います。
(製鉄記念八幡病院 産婦人科部長 蜂須賀 徹医師に聞きました)