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患者数が増加している 「パーキンソン病」 

2019年 7月05日 09:51

高齢化が進み、患者数が増えている病気に「パーキンソン病」があります。日本での患者数は10万人あたり100~180人といわれ、北九州市民100万人で計算すると1,000人~1,800人にあたります。加齢とともに発症しやすく、パーキンソン病はいまやコモンディジーズ(common desease=一般的な病気)とさえ言われています。
長年、治療に携わる荒川修治脳卒中・神経センター長に詳しく聞きました。

飛躍的に進化している治療法

パーキンソン病と聞いて、俳優のマイケル・J・フォックス、ボクサーのモハメド・アリといった名前を浮かべる方も少なくないでしょう。マイケルは30歳、アリは42歳という若さで発症しました。当時、パーキンソン病といえば「不治の病」「将来は寝たきり」といったイメージが先行していましたが、いまは検査も治療も飛躍的な進化を遂げています。
「パーキンソン病自体が原因で亡くなることはありません。最近は良い薬も出ていますが、まだ完治する病気ではなく、継続した治療が必要がです。治療しなければ進行が加速し、生活の質が著しく低下し、寝たきりになる可能性もあります。症状に気付いたら、早めの受診をお勧めします」と荒川修治脳卒中・神経センター長は話します。

パーキンソン病の特徴は?

パーキンソン病の特徴として、次のような症状が挙げられます。

受診は脳神経内科(神経内科)を

動作が緩慢になったり、気分が落ち込んだりする症状が出るため、整形外科や心療内科を受診される方もいます。「病気を疑う症状があった場合、専門としているのは脳神経内科です。専門医がいる病院を早めに受診しましょう」と荒川センター長は話します。
診断は問診、MIBG心筋シンチグラフィ-、Dat(ダット) Scan(スキャン)(ドパミントランスポーターシンチグラフィー)という検査になります。血液検査やCT、MRIでは異常が見られないのがパーキンソン病です。似たような症状の病気で代表的なものに「パーキンソン症候群」がありますが、検査方法、病気の進行度合い、治療方法が異なることから、パーキンソン病の確定は容易でないことがわかります。

なぜ起こる? パーキンソン病

1817年、英国のジェームズ・パーキンソン博士がこの病気を報告して200年が過ぎますが、いまだに原因は不明で、予防や完治にはいたっていません。
わかっている原因として、神経伝達物質のひとつ「ドパミン」が不足しているために、脳からの情報の伝達がうまくいかず、動作や運動に障害が生じるということです。ドパミンは脳の「中脳」にある黒質というところでつくられます。さらに最近の研究で、α-シヌクレインというタンパク質がドパミンの生産を邪魔しているということが解明されました。 

治療は?

不足しているドパミンを補う「L-ドパ」という薬物療法が主流です。L-ドパは一般的に3年から5年はとてもよく効き、その時期を「ハネムーン期」と呼んだりします。残念ながら病状が進行するにつれ、薬の効果が切れる状態が現れるため、その方の症状に合わせ、複数の薬を処方するなどして対処します。

1.病気の研究が進み、診断がつきやすくなった

2.加齢とともに発症しやすい病気である

3.治療効果が高まり、患者さんの寿命が伸びている

これらの要因で、さらにパーキンソン病患者さんは増えると予想されます。
パーキンソン病の進行は比較的ゆっくりで、きちんと薬を服用すれば10年以上経っても、症状のない方と同じように生活できる方もいます。
薬やリハビリ、生活環境の整備や社会的支援(特定疾患医療費助成制度)などを利用しながら、できるだけ気持ちを明るく保ち、病気とうまく付き合うことが大切です。


(写真は第15回北九州脳卒中公開セミナーでの荒川 修治脳卒中・神経センター長)

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