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竹本真生循環器・高血圧センター長に聞く「虚血性心疾患・不整脈・心不全・睡眠時無呼吸症候群が治療の柱」

2020年 11月26日 14:37

当センターでの主な心疾患治療について教えてください。

竹本センター長:「虚血性心疾患・不整脈・心不全・睡眠時無呼吸症候群」の4つを柱としています。虚血性心疾患は心臓の筋肉に血液を送り、酸素と栄養素を供給する冠動脈が動脈硬化等で狭くなったり、血管がけいれんを起こしたりすることで、血液が十分に心筋に行きわたらず心臓が虚血状態となり、胸痛等があらわれる症状です。大きく心筋梗塞と狭心症とがあります。
治療は薬物、カテーテル治療、冠動脈バイパス術になります。高齢患者さんの多い当院では、冠動脈が進行している症例が多く、高度に石灰化している場合には、通常のバルーンやステント治療では十分に広げられないことがあります。
その際は狭窄部分を削り取る「ロータブレーター治療」が適用となり、当院でも2020年10月から行っています。

糖尿病患者さんへの大血管スクリーニング検査とは?

竹本センター長:2019年から「糖尿病大血管スクリーニング」検査を開始しています。「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013」で、糖尿病患者さんは大血管症スクリーニング検査を、年に1度行うことが推奨されているためです。
また、糖尿病患者さんはそうでない患者さんに比べて脳梗塞、頚動脈狭窄症、狭心症、心筋梗塞、腎動脈狭窄症、閉塞性動脈硬化症、大動脈瘤など大血管症といわれる病気の発症リスクや死亡率が3~4倍高くなるといわれています。
それらの病気を早期発見、早期治療することで、心筋梗塞などの心血管イベントを減らし、死亡率を低下させることができます。

不整脈や心不全患者さんへの対応は

竹本センター長:不整脈は脈拍数が100回/分以上になる「頻脈性不整脈」、50回/以下になる「徐脈性不整脈」、タイミングのずれた「期外性不整脈」とがあります。
頻脈性不整脈と期外性不整脈はアブレーション治療の対象になります。アブレーション治療とは局所麻酔下にアブレーションカテーテルを足の付け根の血管から心臓に挿入し、不整脈の原因部位を同定し、その部位を高周波で焼灼し不整脈が起こらないようにする根治性の高い治療法です。当院では発作性心房細動の患者さんにクライオバルーン冷凍アブレーション治療も行っています。
一方、脈が遅くなる徐脈性不整脈はペースメーカー移植術による治療方法により、正常な脈拍を保つことが可能となります。当院でも導入したリードレスペースメーカーはカプセル型で従来のペースメーカーと同様の機能で小型軽量化され、埋め込み手術も短期間となります。


  (リードレスペースメーカー)

眠っている間に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」は、他の疾患を合併していることが多いそうですね。 

竹本センター長:睡眠時無呼吸症候群は交通事故等の原因になったり、生活の質を下げるのみでなく、さまざまな疾患と関連があります。睡眠時無呼吸症候群の症状がある人は健常者に比べ、虚血性心疾患や脳梗塞を起こす可能性が4倍増えるというデータがあります。また、心房細動は4倍、心不全は3倍、認知症は2倍、うつ病は5倍増えるとされています。
反対に、狭心症患者さんの3~4割、糖尿病患者さんの約7割、心不全患者さんの約3割が睡眠時無呼吸症候群を合併しているという報告もあります。
早期検査、早期治療を行うことで、合併症の発症を極力抑えるように努めています。

八幡地区は高齢化が進んでいる地域なので、複数の疾患をもつ患者さんも多いのでは。

竹本センター長:八幡地区の患者さんは他の地区より10歳程度、平均年齢が高いと感じています。それだけに合併疾患も多いです。「木を見て森を見ず」という言葉がありますが、患者さんは一人として同じ病態の方はいらっしゃいません。木(病気)も診るし、森(患者さん)もしっかり診て、その患者さん一人ひとりに最適な医療を提供する「テーラーメード医療」をチーム一丸となって心がけています。八幡地区から循環器疾患をなくす!を目標に診療に臨んでいます。

竹本 真生(たけもと まさお)循環器・高血圧センター長
【専門分野】心血管インターベンション、カテーテルアブレーション、デバイス治療、心不全
【資格】日本内科学会認定内科医/総合内科専門医/指導医、日本循環器学会専門医
日本心血管インターベンション治療学会認定医/指導医/専門医/代議員、日本不整脈心電学会専門医/クライオアブレーション実施医/ICD/CRT植え込み実施医/評議員

 

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