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4つの認知症~種類と初期症状について~
2020年 9月16日 11:51
物忘れと認知症
うっかり約束の時間や物をどこにしまったか忘れたりすることは、誰しもあるものです。これは単なる物忘れです。
一方、認知症は約束したこと自体、物をしまったこと自体を忘れてしまい、本人に忘れたという自覚がありません。そのため、物がなくなったことを「盗られた」と思い込み、大騒ぎになることもあります(物盗られ妄想)。
このように脳の機能が低下して、日常生活に支障をきたすようになった状態を認知症と言います。記憶力や判断力だけでなく、進行すると身体機能も悪くなって寝たきりになります。
認知症にはいろいろな種類がありますが、頻度の高いものを簡単に説明します。
アルツハイマー型認知症(約60%)
脳にアミロイドβという物質が沈着して、神経細胞の障害が起こります。物忘れで発症することが多く、新しいことを覚えられなくなります(短期記憶障害)。進行すると日付がわからなくなり、金銭管理や家事ができなくなります。頭部CTやMRI検査では海馬の萎縮がみられます(初期には目立たないこともあります)。根治療法はまだありませんが、進行を遅らせる薬があります。
血管性認知症(約20%)
脳梗塞や脳出血が原因となります。たとえ病変が小さくても、再発を繰り返すことによって認知症になることもあります。意欲低下が目立ち、脳梗塞(脳出血)でみられるような歩行障害や言語障害、嚥下障害をしばしば伴います。脳梗塞(脳出血)を予防することで認知症が進行しないようにします。
レビー小体型認知症(約10%)
脳にαシヌクレインという物質が沈着して、神経細胞の障害が起こります。幻視(存在しないのに虫や人物がみえたりする)が特徴的な症状です。ほかに嗅覚低下、睡眠中の異常行動(夢をみているときに大声を出す、体を激しく動かす)、パーキンソン症状(動作が鈍くなる、小刻み歩行)などがあります。検査では後頭葉に障害がみられます。根治療法はまだありませんが、進行を遅らせる薬があります。
前頭側頭葉変性症
まれに起こる前頭側頭葉変性症は、人格や行動の変化を特徴とするタイプ(堂々と万引きする、関心がなくなると勝手に出ていく、毎日同じものを食べるなど)、言語がしゃべれなくなるタイプ、言葉の意味がわからなくなるタイプなどがあります。
認知症には様々な種類があって初期症状が異なります。物忘れで発症するとは限りませんので注意してください。いずれの種類でも、進行して脳障害が広範囲に及べば、知的機能は廃絶し、寝たきりになってしまいます。気になる症状があったら、主治医に相談して早めに専門医を受診してください。
(脳卒中・神経センター長、脳神経内科部長 荒川 修治先生に聞きました)