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新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まりました。ワクチンの詳しいお話

2021年 2月05日 11:12

ワクチンは免疫状態をつくります

わたしたちの身の回りには細菌やウイルスなど、さまざまな病気を引き起こす原因となる微生物(病原体)が存在します。病原体が体の中に入ると病気になったり、ひどい場合は命を落としてしまうこともあります。
しかし、私たちヒトのからだには、一度入ってきた病原体が再び体の中に入ってきても病気にならないようにするしくみがあります。このしくみを「免疫」といい、入ってきた病原体を覚えて、からだの中で病原体とたたかう準備を行います。免疫ができることで、再び病原体が体の中に入っても病気にかかりにくくなったり、もしくは病気にかかっても症状が軽くなったりするようになります。
病原体や病原体の作り出す毒素などは「抗原」と呼ばれ、病原体や毒素に反応して病原性をなくす「抗体」と呼ばれるタンパクをつくる元になります。

ワクチンは、病原体などから病原性をできる限りなくしたり、病原体を死滅させたり(不活化)、毒素を無毒化して作られます。ワクチンを事前に体内に接種することによって免疫状態を作り、病原体などから体を守ります。ワクチンの種類には主に以下の2つがあります。

生ワクチン

病原性を弱めた病原体からできています(病原体は生きていますので「生ワクチン」と呼ばれています)。接種すると、その病気に自然にかかった場合とほぼ同じ免疫力がつくことが期待できます。一方で、副反応として、軽度で済むことが多いのですが、その病気にかかったような症状が出ることがあります。代表的なワクチンとしては、麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)、おたふくかぜワクチン、水痘(みずほうそう)ワクチン、BCGワクチン(結核)などがあります。

不活化ワクチン、組換えタンパクワクチン

感染力をなくした病原体や、病原体を構成するタンパク質からできています。1回接種しただけでは必要な免疫を獲得・維持できないため、一般に複数回の接種が必要です。
代表的なワクチンとしては、インフルエンザワクチン、B型肝炎ワクチン、肺炎球菌ワクチンなどがあります。
現在開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンではメッセンジャーRNAやDNAなどの核酸が用いられており、これらのワクチンでは、ウイルスを構成するタンパク質の遺伝情報を投与します。
その遺伝情報をもとに、体内でウイルスのタンパク質を作り、そのタンパク質に対する抗体が作られることで免疫を獲得します。今回、新型コロナウイルスの表面にあるタンパク質に対するワクチンが初めて海外で承認を受けました。
ワクチンはこれまで多くの病気の流行を防止し、死亡者の大幅な減少をもたらしており、現在もたくさんの感染症の流行を抑えています。一方で、ワクチンは感染症にかかっていない健常の方や基礎疾患をお持ちの方にも接種することから、きわめて高い安全性が求められます。技術開発の進歩にあわせて、より効果的で安全なワクチンをより早く提供するための取組みが進んでいます。

(製鉄記念八幡病院 薬剤部 後藤渉部長)

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