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胃がんを知る

2021年 12月03日 16:54

胃がんはどんな病気?

胃がんは胃の粘膜上皮から発生し、進行するにつれて胃壁の深部にひろがっていきます。さらに進行してくると、リンパ節転移・肝転移や腹膜転移(腹膜播種)を認めることもあります。


  

 

胃がんは増えているの?

かつて胃がんはがんの中で死亡者数が第一位でした。最近では肺がんの死亡者数が胃がんを上回っています。胃がんの罹患数(患者数)はほぼ横ばいの状態ですが、高齢の男性に限っては、むしろ増加しているともいわれています。

症状は?

早期の胃がんでは症状がないことも多く、健康診断(胃カメラ・胃透視)でたまたま見つかることも少なくないです。進行するにつれて、いろいろな症状が出ることがあります。

おもな原因は?

胃がん発症のリスクを上げる要因としてはピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染・喫煙があります。また、高塩分食品の摂取がリスクを高めることが報告されています。ピロリ菌は年齢が高いほど感染率が高いといわれています。
ピロリ菌感染者全員が胃がんになるわけではありませんが、ピロリ菌は胃がんだけではなく胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃MALTリンパ腫などの疾患にも関連しているともいわれています。

胃がんの治療は

胃がんの治療は胃癌治療ガイドラインに基づいて行っています。きわめて早期の胃がんであれば胃カメラでがんを切除することもできます。外科的治療(手術)が必要になることも多いです。胃がんが見つかった時点でほかの臓器に転移があれば、抗がん剤治療が第一選択になります。

胃がんの手術について

胃がんに対する手術術式としては開腹手術と腹腔鏡手術があります。以前は開腹手術が主流でしたが、2002年に胃がんに対する腹腔鏡下手術が保険診療の適応となりました。最近では腹腔鏡下手術の方が開腹手術よりも普及しています。また手術支援ロボットによる腹腔鏡下手術もはじまっています。

胃がんにならないようにするには

一般的ながんの予防法として①禁煙②節酒③食生活の改善④適度な運動⑤適正体重の維持があげられています。世界保健機構(WHO)からの報告によれば「がんの3人に1人は予防できる」ともいわれています。

 

 
早期の状態で発見されれば、治療によって胃がんを根治することができるので、定期的な健康診断も重要です。
胃がんの発症リスクを上げる要因の一つであるピロリ菌感染に対して、除菌治療を保険診療で行うためには、胃内視鏡検査で胃炎の所見を確認することとピロリ菌の感染診断(尿気呼気試験・血中抗体測定法・便中抗原測定法など)が必要です。
気になる症状があれば、かかりつけの先生に相談するようにしましょう。また、症状がなくても、職場の健康診断や胃検診などを定期的に受けるように心がけましょう。

【文責】社会医療法人製鉄記念八幡病院 消化器外科部長 難波江 俊永

 

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