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腰痛に次いで多い整形疾患「変形性膝関節症」。予備軍含めて3,000万人?!

2022年 1月06日 11:06

予備軍含めて3,000万人が変形性膝関節症?!
末期はO脚になる可能性も。

変形性膝関節症とは膝の軟骨がすり減って、痛みや腫れが生じている状態のことです。膝の違和感くらいから始まり、動作時の痛みが進行し、徐々に動きが悪くなっていきます。炎症が生じていると水がたまったり、熱をもったりもします。末期になると外観でもはっきりわかるO脚になることも多いです。

日本では、変形性膝関節症の方は推定で1,000万人程度いるといわれ、整形外科疾患では腰痛に次いで2番目に多い数となっています。また無症状でも、レントゲンで軟骨のすり減りを確認できる人を含めると、3,000万人にも上るといわれています。 
男性は50代、女性は40代から増え始め、年齢とともに有病率は高まっていき、男女比は1:3~4で女性に多いです。

原因や治療方法は?

加齢が主な原因ですが、肥満や遺伝的素因に起因するものもあります。また、靭帯(じんたい)損傷や半月板損傷に続発するものもあります。
診断は問診、診察に加え、単純X線撮影で行います。靭帯損傷や半月板損傷の有無の確認や骨壊死の除外が必要な際は、追加でMRIの撮影を行う場合もあります。また、関節リウマチや感染などとの鑑別が必要な際には、血液検査や関節穿刺(注射針を刺して体液や組織を採取すること)を行うこともあります。

一度、すり減ってしまった軟骨を元の形に修復する治療は困難ですので、治療は症状を緩和する薬物療法や物理療法、運動療法などが中心になります。
具体的には、湿布や飲み薬を使いつつヒアルロン酸の関節注射を行い、ホットパックなどで温めたりする物理療法や大腿四頭筋(ももの前面)訓練を中心とした筋力トレーニング、関節の動きを維持・改善する可動域訓練を行っていきます。サポーターや足底板などの装具を使用することもあります。
保存治療を可能な限り続け、うまく付き合っていくという治療が大半です。これらの治療でも症状が軽減しない場合は、手術療法を行う場合があります。

症状が安定しなければ手術も

手術には骨切り術や人工膝関節置換術などがあります。どの手術法にもメリット・デメリットがあります。また、手術をすればすぐに痛みがなくなるというわけではなく、手術に伴う新たな痛みはもちろんあります。
手術直後からリハビリ、特に可動域訓練を行わなければ(こう)(しゅく)(固まってしまうこと)が起こって、のちのち日常生活での支障になってしまいますので、術後は患者さんご本人の努力も必要になってきます。

予防は可能ですか?

下肢の筋力、特に大腿四頭筋の筋力をつけておくことは重要です。大腿四頭筋の筋力が十分であれば、膝関節の内側への負担が減って、症状が緩和される人もいます。また、下肢筋力を維持できていれば、もし将来痛みが出てきても日常生活で、できなくなることが少なくてすみます。

膝の痛みを感じたら、まずはお近くの整形外科医へ

また、(当院では行っていませんが)最近、保険診療外の治療でPRP(多血小板血漿)治療も話題になっています。患者さんご自身の血液から抽出したPRPを、患部に注射する再生医療ですが、完全に軟骨がなくなってしまった部分が再生するような、夢のような治療法ではないです。

変形性膝関節症の診断がついたとしても、いきなり手術になることは少ないです。膝の痛みを感じたら、まずは近くの整形外科を受診してみてください。

社会医療法人製鉄記念八幡病院 整形外科医長 川口 雅之

 

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