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便秘とお尻のお話

2022年 8月24日 15:11

便の回数

「私は出るときはすっきり出るけど、3日に一回ぐらいしか便が出なくて便秘で困っている」
「便は毎日出るから便秘ではないと思うけど、いきまないと出ないし残った感じがよくあるのよね」といった方がおられるのではないでしょうか。女性から時々このような訴えを聞くことがあります。

医学的には便の回数だけでなく、便が硬い・強くいきまないと出ない・お尻のところまで来ているのに出にくい感じがある・排便後も残便感があるなどの症状がいくつか重なると便秘と診断されます。はじめにご紹介した訴えのうち、実は前者は便秘ではなく、後者は便秘の可能性があることになります。

あなたの便秘の原因は?

便秘の原因にもいろいろあり、大腸の動きが悪くなり排便回数が減る「大腸通過遅延型」、お尻の近くまで便は来ているのにうまく出せない「機能性便排出障害」、大腸の動きもお尻の機能も大きな問題はないのに食物繊維の摂取不足や便が硬いことによる排便困難、残便感といった症状が主な「大腸通過正常型」などがあり、これらの複数の原因が絡んでいることもあります。

当然、原因が違えば対処方法は異なるわけです。
大腸通過正常型であれば食物繊維の摂取を心掛け、非刺激性の緩下剤などで症状の改善が見込めます。一方で、大腸通過遅延型では非刺激性の下剤に加え、大腸の運動を調整する薬を使用する必要が出てくることもあります。

下剤は効果もあるけれど、副作用にもご注意を!

ここで、皆さんに注意すべき二つの事例をご紹介します。「毎日便が出ないと気持ち悪いので、毎日市販の下剤を服用している」という方はおられないでしょうか。市販の下剤の中にはセンナや大黄(ダイオウ)といった成分が入った、刺激性下剤といわれる薬があります。刺激性下剤は大腸の筋肉を刺激して、無理やり動かすことで排便を促すものです。毎日、刺激性下剤を使用することは毎日、大腸の筋肉に無理な筋トレを強要しているようなものです。そのような状態を続けていると筋肉は疲労し、かえって動けなくなることがあります。

刺激性の下剤を安易に毎日使用し続けると4~5年もすると薬が効かなくなるだけでなく、かえって便秘の症状を悪化させてしまうことがあります。「でも、私の使っている薬は漢方だから大丈夫」と思っておられる方、漢方でも副作用はありますし、刺激性下剤の連用はたとえ漢方と書いてあっても同じリスクを冒していることになります。あなたが使用している下剤の成分を確認し、適切な使用を心掛けてください。

恥ずかしがらずに専門医にご相談ください

二つ目は、「とにかくいきまないと便が出ないので、トイレに入ると20分も30分も頑張ってやっと出る感じ」という方も要注意です。人間の体はよくできていて、排便の時、大腸が大きな収縮をするときに、普段は少し曲がっている肛門近くの直腸はまっすぐになり、おしりの筋肉は緩むようになっています。ところが、このような大腸と直腸肛門の協調運動がうまくいかなくなると便秘の原因になります。ケーキのデコレーションなどに使うペストリーバッグの出口が詰まっていたり、出口近くが折れていたらうまく使えないのと同じ要領です。それなのに、強いいきみを続けていると、直腸の壁に圧がかかり続けます。

男性は直腸の周囲は骨盤の骨や前立腺といった硬い臓器に囲まれており、圧を支えることができますが、女性の場合、直腸の前方は膣があり、硬い壁がないため、圧がそちらの方向に逃げて直腸の前方が膨らんでしまうことがあります。このような状態を直腸瘤といい、圧が逃げるためさらにおしりのほうに圧がかからなくなります。いきめばいきむほど、知らないうちに状況が悪化してしまい、ひどい場合にはそのふくらみを縫い縮める手術をしなくてはいけなくなることもあります。強くいきむ癖がついているなと思い当たる方、ちょっとしたコツでいきみなく排便が出やすくなることもあります。

とにかく、なんだか排便に困っていると感じている方、恥ずかしがらずに専門医に相談してみましょう。

大腸がんの可能性もゼロではありません

最後に、今までお話ししてきた大腸や肛門の機能の異常が原因となる便秘のほかに、大腸の通りを悪くする病気のために生じる便秘があることを忘れてはいけません。その代表格が大腸がんです。癌といわれると女性では乳がんが怖いとよく言われ、気にしておられる方が多いと思います。
確かに罹患者数(癌にかかる方の数)では乳がんが第一位ですが、がんによる死亡者数では女性の第一位は大腸がんです。男性でも第三位に位置します。

大腸がんは50代後半から60代ごろから徐々に増加してきます

しかし、若いから大丈夫というわけではありません。便秘が気になる方、特に最近調子が変わってきたと感じておられる方は是非、大腸がんの可能性も考えて、早めの相談をご検討ください。

【文責】社会医療法人製鉄記念八幡病院 副院長・消化器病センター長 石川幹真

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