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広報Report

冬季に流行する「ノロウイルス」について 

2020年 12月21日 14:28

福岡市でノロウイルス集団感染急増の報道

12月3日(木)付けの西日本新聞朝刊に、福岡市でノロウイルスなどの感染性胃腸炎の集団感染急増という記事が掲載されていました。福岡市保健予防課によると、集団感染は昨年9月0件、10月2件、11月0件に対し、今年11月に入り市内の保育園や高齢者施設で52件と、大幅に増えているそうです。「警報レベル」に達するほど多くはないものの、九州の他の自治体で集団感染の多発は確認されておらず、地域差については分かっていないようです。
冬季に流行するノロウイルスについてまとめました。

激しい嘔吐(吐き気)が特徴

主な症状は「吐き気・嘔吐・下痢・腹痛」で、胃をひっくり返すような嘔吐もしくは吐き気が突然、激しく起きるのが特徴です。下痢は水様性で、重症になると1日に十数回見られますが、通常は2〜3回で治まります。
ほかに発熱、筋肉痛、頭痛などが見られますが、後遺症が残ることはなくいずれも軽症です。ただし、乳幼児や高齢者などでは重症化したり、嘔吐物が誤って気道に詰まり、死亡することがあるので注意が必要です。

ノロウイルス感染の原因は

1.食品からの感染 

ノロウイルスは乳幼児から成人に至るまで、幅広い年齢層に胃腸炎を起こすウイルスで、手指や食品などを介して経口で感染します。とくに、カキなどの二枚貝を生、あるいは十分に加熱調理せずに食べることで感染します。
 

2.直接的接触感染

ノロウイルスによる胃腸炎患者の嘔吐物や便に接触した人の手指衛生が不十分だった場合、汚染した手指を介して感染します。

3.間接的接触感染

嘔吐物や便に含まれるノロウイルスが衣服、ドアノブ、便座などの環境表面に付着して、汚染された環境表面に触れた人の手指を介して感染します。

4.飛沫感染

ノロウイルスによる胃腸炎患者の嘔吐物や便の処理の際、大量にウイルスが含まれる飛沫を直接吸入して感染します。嘔吐物は2~3m程度飛ぶと言われています。

検査は?

「ノロウイルス抗原検査」というものがあります。便中のノロウイルスを検査キットで検出するものです。医療機関で医師が必要と認めた場合に行われ、診断の補助に用いられます。この検査は結果が早く出るメリットがありますが、ノロウイルスに感染していても陽性とならない場合もあります。反対に陰性だからといって感染していないことを確かめることはできません。

治療について

治療は対症療法で、特に体力の弱い乳幼児、高齢者は脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないように、水分と栄養の補給を充分に行う必要があります。脱水症状がひどい場合は病院で輸液を行うなどの治療が必要となります。
下痢をしていると、下痢止めを飲みたくなると思いますが、ウイルスは体外に排出した方が良いため、使用しないことが望ましいです。症状がひどい場合や改善しない場合、悪化する場合は、すぐに病院を受診してください。

ノロウイルス感染からの予防策は?

一般的にウイルスは熱に弱いため、加熱処理が有効です。二枚貝などでは85~90℃で90秒以上の加熱が必要です。ノロウイルスに感染した人の嘔吐物や便からの「二次感染」を予防するため、①手指衛生、②曝露(ウイルスにさらされること)を最小限にする、③環境汚染の除去が重要となります。

嘔吐物などの処理で気をつけること

カーペットなどが嘔吐物や便などで汚れてしまった場合は、水や洗剤などを用いて、キッチンペーパーや新聞紙などで嘔吐物や便を可能な限り拭き取ったあと、スチームアイロンで熱消毒します。カーペットが取り外せる場合は、熱湯で洗浄し天日干しするとよいです。
※次亜塩素酸ナトリウムは、漂白作用があるため、色柄ものの消毒には不向きです。

衣類の吐物処理は、すぐに洗えないときは衣類をビニール袋に入れ、周囲を汚染しないようにします。洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いします。その際、しぶきを吸い込まないように注意して行いましょう。
リネン類の消毒は、0.02%塩素系漂白剤調整液での消毒が有効です。その後、十分にすすぎ、高温の乾燥機などを使用すると殺菌効果は高まります。 85℃で1分間以上の熱水洗濯が効果的です。
布団などすぐに洗濯できない場合は、汚物を除去してよく乾燥させ、スチームアイロンや布団乾燥機を使用すると効果的です。下洗いを行なった場所も0.02%次亜塩素酸ナトリウムで消毒し、その後、洗剤を使用して清掃を行いましょう。

新型コロナもノロウイルスも、十分な手洗いで感染を予防することができます。引き続き、基本的な感染予防策を徹底してください。

(川原しのぶ感染管理認定看護師に聞きました)


 

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